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PK戦で選手が最も緊張するのはどの場面か? 4つの局面で見るキッカーの心理

text by ベン・リトルトン photo by Getty Images

対決を制する最大の戦略とは?

「あんなに緊張するとは自分でも意外だった」と1名の選手が言った。「テレビにはきっと私の脚が緊張のあまり震えているのが映っていると思った」

 また別の選手はチームメイトが失敗した後、緊張が和らいだと言った。「仲間の失敗を見たときには、最初は何やっているんだと怒りを感じたけれど、自分の緊張感は薄れた。気持ちがぐっと落ち着いたよ」

 ペナルティスポットまで歩いていく第3局面になると、選手たちのストレスはにわかに消える。代わりに感じるのが孤独感だ。3名の選手はPK戦で戦わねばならない一番手強い相手が、その孤独感だと言っている。手にボールを持つやいなやほっとしたと言う選手がいた。

「手に何か持っていればストレスは減るんじゃないかな。私は両手でボールを少し転がした。あの動作がすごく重要だったと思う」

 3名の選手も歩いていく間に不安が減じたと言っている。

 第4局面での不安を表明したのはわずかに2名の選手だけだった。1名は普段の習慣を破ってGKに背を向けた。ヨルデットに言わせるとそれは人がストレスや緊張を回避するときの古典的な心理的戦略なのだそうだ。

 ヨルデットは、PKのそれぞれの局面で選手たちがどう感じているかを知れば、監督たちは手を打つことができる、と結論づけている。第1局面では、選手たちはできるだけ早い段階で自分が何番目に蹴るかを知りたい、(チームメイトがぎりぎりの段階で辞退するのも含めて)驚かされるのはいやだと思っている。

 第2局面では、自分の番をただ受動的に待っていれば、失敗するんじゃないかというようなネガティブな感情に翻弄されてしまう、ということ。

 第3局面では、ペナルティスポットまで歩いていくときに覚える孤独感には、ストレスと直面したときにそれを能動的に処理しようとする、心理学で言うところの「能動規制」が必要だということ。

 第4局面では、GKと顔と顔をつきあわせることが対決を制する最大の戦略であることだ。(続きは『PK 最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?』でお楽しみください)

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【目次】
第1章 イングランド病
第2章 オスロ解決法?
第3章 PKのDNA
第4章 PKをめぐるドラマ
第5章 ビッグデータが勝率を上げる など

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