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モウリーニョ解任の是非。すれ違った相互理解、不振はチェルシー史上最高の指揮官の責任に

text by 山中忍 photo by Getty Images

クラブ史上最高の指揮官の解任。失態はクラブ全体に

モウリーニョ解任の是非。すれ違った相互理解、不振はチェルシー史上最高の指揮官の責任に
暫定監督就任が発表されたフース・ヒディンク氏【写真:Getty Images】

 リーグ順位とともにチームの士気も下降傾向が続くと危惧すれば、オーナーが監督交代を考えても不思議ではない。それが、既に絶望視されているトップ4を最低ラインとしてきたアブラモビッチとなれば尚更。理想ではなく現実だけを見て物を言えば今回の解任は仕方がなかった。

 そして、フース・ヒディンクという暫定監督の人選は正解だと言える。69歳の大ベテラン監督は、良くも悪くも挑戦的なモウリーニョとは対照的に選手の肩に手を回して気遣うタイプ。守備の引き締めは必用だが、攻撃的スタイルの確立を前提に獲得された近年加入組の主力にすれば、精神衛生の上で歓迎できる元来は攻撃好きな指揮官でもある。

 更に古株のテリーやイバノビッチ、そしてファンにとっては、09年にチェルシーをFAカップ優勝とCLベスト4に導いた元暫定監督だ。老将だが、当人には代表でもクラブでも失敗が続いた過去5年間の汚名返上というモチベーションもあるはずだ。

 その意欲が、前体制下で出場機会に飢えていたユース出身のセンターハーフ、ルーベン・ロフタス=チークの登用という形でも表現されれば、ファンの目はモウリーニョ体制という過去から、新たに正監督を迎える来季以降の未来へと向き始める。

 クラブ史上最高の指揮官と踏み出した長期安定への歩みが2年半で止まり、トップ6を狙うにも負けが許されないという現実は、経営陣、前監督、そして既存戦力を含むチェルシー全体としての明らかな失態であるにしても…。

【了】

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