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日本サッカーの守備に足りない“スペースを埋めようとする感覚”。守備マイスター・松田浩が考えるゾーンディフェンスの極意とは?

text by 鈴木康浩 photo by Getty Images

マンツーマンとゾーディンフェンスの融合が守備のトレンドに?

日本サッカーの守備に足りない“スペースを埋めようとする感覚”。守備マイスター・松田浩が考えるゾーンディフェンスの極意とは?
図1

 かつてJリーグで福岡や神戸、栃木などの指揮官を歴任し、ゾーンディフェンスを駆使して守備組織を構築する、日本サッカー界の守備の第一人者・松田浩氏(日本サッカー協会技術委員)は近刊『サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論』(カンゼン)のなかで、上記の守備の考え方をわかりやすく実践した参考例として、2013-14シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝ファーストレグ、4対0でバイエルン・ミュンヘンがバルセロナを粉砕した試合を挙げている。事例は少々古いものだが、守備の基本であり、普遍的な考え方を提示できるものなので紹介したい。

 バルセロナがディフェンスラインでボールを繋いでいるシーンがある。そのボールホルダーに対して、バイエルンの1トップのゴメスや、2シャドーのミュラーやシュバインシュタイガーが前線まで顔を出してボールを奪いに行くふりをして行かない、という牽制を繰り返しながら様子を見ている【図1】。前出の書籍のなかで松田氏はこう解説する。

「バイエルンはセンターサークルの頂点を基準にして、守備時にはゴメスとミュラー、あるいは、ゴメスとシュバインシュタイガーが2トップの横並びになって守備ブロックの頂点を作るというイメージ。このラインが僕は至ってノーマルな守備ブロックの位置だと思っているのですが、バイエルンもこのラインをプレッシングのスタートラインと決めているのか、相手のボールホルダーに対して深追いをして交わされるようなことは絶対にしないです。どこかでプレッシングができるタイミングを図りつつ、視野外の視野で後方を確認しながら、自分がいるべき守備のポジションを各々がとっている」

 視野外の視野とは、首を振って確認できる視野のことだ。この試合ではシュバインシュタイガーらが視野外の視野でしきりに後方を確認し、周りの味方たちにスペースを指差しながら声をかけて、守備の役割分担を明確にしようとするアクションが覗える。

「このスペースを見ておけよ、という感じで後ろの選手に教えていますよね。そして後ろの選手との距離感を、首を振って確認しながら、適正なポジションをとりつつ、けれど相手のボールホルダーを深追いしない、というスタンスで守備ブロックをキープできている」

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