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セリエA 8年前

ミラン、選手価値を下げ続ける“名門”。迷走を続ける計画性なき補強戦略

シリーズ:最も選手の価値を向上させるクラブはどこか text by Keiske Horie photo by Getty Images

計画性の欠如によって犠牲となる若手選手たち

バルトシュ・サラモン、スソ、リッカルド・サポナーラ、ホセ・マウリ
出場機会を奪うだけに終わっているミランの青田買い補強【写真:Getty Images】

 しかしながら、ミランにおける問題点はフリー移籍によるものだけではない。同クラブは計画性の欠如によって若手選手の育成にも深刻な問題を抱えている。

 フリー移籍によって即戦力ばかりを獲得してきたミランは、前述した通り常に大量の選手を抱えており、各ポジションに3名ほどの選手が待機している。そのため、若手選手に活躍の場を与える余裕はなく、出場機会を奪う結果となっている。

 また、ミランは前回特集したユベントスとは異なり、期限付き移籍による若手育成も非常に稚拙であることが追い打ちをかけている。例えば、2013年に獲得したバルトシュ・サラモンやジェルソン・ヴェルガラは獲得後半年間ミランに在籍したことでほとんど出場機会を得ることなく時間を過ごし、その後レンタル先のクラブでも活躍することなく終わっている。

 現在エンポリで活躍するリッカルド・サポナーラに関しても、負傷離脱があったとはいえ獲得後1年半のミラン在籍で出場した試合数はわずかに公式戦8試合である。その後、エンポリに復帰した同選手はチームの中心として活躍し、現在はミラン在籍時の2倍の市場価値に成長した。そして、現在も同じ誤ちをホセ・マウリ、スソで続けようとしている(スソは今冬にジェノアに期限付き移籍となった)。

 仮にサラモン、ヴェルガラ、サポナーラといった選手たちを獲得後半年ないし1年間は所属元クラブに期限付き移籍で残留させていれば、結果は違ったものとなっただろう。シモーネ・ザザ、ドメニコ・ベラルディ、ダニエレ・ルガーニ、ロランド・マンドラゴラといった若手選手の保有権を確保しながらも、地方クラブで成長させる戦略をとっているユベントスとは対称的だ。

 ミランの選手育成能力は、もはやクラブの枠を超えイタリアサッカー全体の問題となっている。リッカルド・モントリーボ、マッティア・デ・シリオ、イグナツィオ・アバーテを筆頭に、かつてはイタリア代表の半数を占めていたミランの選手たちはクラブの不振とともに先発の座から姿を消した。

 また、ジャコモ・ボナベントゥーラ、サポナーラ、アンドレア・ベルトラッチといった選手たちは、U-21イタリア代表を引っ張ってきたダイヤの原石だ。彼らの成長結果はイタリア代表の未来に直結する。

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