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元米代表MF、娘誕生と同時に引退表明「人生は素晴らしい…そうだろ?」

text by 編集部 photo by Getty Images

スチュアート・ホールデン
アメリカ代表でのスチュアート・ホールデン【写真:Getty Images】

 元アメリカ代表のスチュアート・ホールデンが現役引退を表明した。アメリカサッカー協会の公式サイト上にメッセージを掲載し、感謝を述べている。

「人生って素晴らしい…そうだろ? 往々にしてライフワークとは正しい道をいっているものさ。僕は今、座って引退に向けた手紙を書いている。11年のキャリア最終章だ。妻は初めての子供を産むため分娩室へ向かった(僕も病院へ向かっているんだ。ちょっと待ってね)」

 こんな書き出しで始まった手紙には、キャリアを振り返りつつ引退を決断した理由についても記されていた。「数え切れないほどの眠れない夜を経験した。痛み、苦しみ、そしてずっと精神の葛藤があって、それら全てが新たな道へ進め、というサインだった」と負傷続きの現状が引退の決め手になったようだ。

 若くして期待されたホールデンはヒューストン・ダイナモで2度のMLSカップ優勝に貢献し、2010年に当時プレミアリーグのボルトンへ移籍した。アメリカ代表として南アフリカW杯に出場するなど順風満帆かと思われた矢先、2011年3月に膝に全治6ヶ月の重傷を負うと、そこから復帰しては手術を繰り返す日々が続く。2013年にはアメリカ代表に復帰してCONCACAFゴールドカップに出場するも、そこで再び負傷。それ以降所属クラブがなくリハビリに励んでいた。

 ホールデンは「『I am retired(僕は引退した)』という3つの単語を発するたびに、ファンが叫けぶスタジアムの中へ歩いていく姿、最後の瞬間にゴールを決めるシーン、素晴らしいチームの一員だった記憶が蘇ってくるんだ! 人生の終わりに地獄のような戦いを強いられようと、死んでも”Rワード”(retire=引退)を言うつもりはないよ」と、中山雅史がコンサドーレ札幌を退団する際のように力強く宣言した。

 一方で「僕は常に挫折と向き合ってきた。本当に多くのね。でもポジティブさ。残念なことがあるといつも『OK、次は何?』と自分に聞くんだ。今はまたその質問に答えなきゃいけないね」と弱気な面も見せている。

 冒頭の一節で書かれていたように、引退発表と同じ日に第1子となる娘が誕生したホールデン。新たな門出を前に「父親として、僕はこれまでのプロキャリアで経験したのと同じような恐怖や挑戦に向き合い、当然罰も受けるだろう。だけどそこには美しい娘や素晴らしい妻がいて、その瞬間を共有できるんだ」と喜びを語っている。

 最近は一足先にスパイクを脱いだランドン・ドノバン氏らとともにサッカーの普及活動を推進してきたホールデンは、愛する家族とともに第二の人生を歩み始めようとしている。

【了】

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