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久保建英につづきレアルの中井卓大も帰国か? FIFAによる処分の根拠は?【弁護士が解説します】

シリーズ:弁護士が解説します text by 諏訪匠 photo by Getty Images

選手の自由を制限することは正当か?

4.クラブのコンプライアンス

 クラブは,単なるスポーツ団体という枠組みを超えた大きな社会的意義をもっています。サポーター、企業、地域…これら利害関係者の中心となって成長・発展していくべき存在なのです。

 そのため、クラブには、一般企業よりも高いレベルでのコンプライアンス(法令遵守)が求められると考えています。このことは、Jリーグのクラブライセンス制度における法務基準として、クラブに顧問弁護士を置くことが推奨されていることにも表れており、今後もより一層コンプライアンス強化の意識は高まっていくと考えられます。

 FIFAが若年選手の国際移籍に対して厳格な姿勢をとっている以上、今後他のクラブに対しても処分が下されることは十分に考えられ、クラブとしては迅速な対応が必要となります。

 他方で、処罰やコンプライアンスの強化が進むと、選手は自分ではどうしようもない事情によって、貴重な経験の機会を奪われてしまいます。国際移籍の禁止の主目的は選手の保護にあるので、例えば選手の教育等に関してクラブによる十分な整備がされているのであれば処分を軽減する、といった対応も考慮されるべきではないでしょうか。

 将来のサッカー界を担う選手達の成長を阻害しないためにも、FIFAには柔軟な措置をとることを期待したいと思います。

【了】

プロフィール
諏訪 匠(すわ たくみ)
弁護士。都内法律事務所所属。一般民事から企業法務まで扱う。休みの日にはJリーグ観戦。

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