【3】大儀見優季よ、イブラヒモビッチになれ
試合に勝つためには何が必要か。それは十中八九「ゴール」だ。それは何にも変えられないサッカーにおける真理であると言える。しかし、いまのなでしこには欠けている。
4年前のロンドン五輪最終予選では5試合で8得点を挙げ、アジアを制して五輪行きを決めた。チームメンバーはほぼ変わっていないが、今大会は2試合で2得点と物足りなさが残る。
大会前に昨季のなでしこリーグ得点王だった菅澤優衣香が負傷で離脱してしまったことは確かに痛かった。チームにとって大きな損失だ。それでも10日で5試合という超短期決戦を勝ち抜くにはコンディション不良の選手ではなく、今起用できる戦力で勝負しなければならない。
ポイントはFW大儀見優季だ。豊富な経験、知恵、技術など様々な要素を兼ね備えたエースは、もっとエゴ丸出しでゴールを狙っていいはずだ。男子で言えばズラタン・イブラヒモビッチのような存在だ。
大儀見はあらゆるプレーを高次元でこなすが故、ボールを奪われれば中盤まで追って体を張り、パスを受ければ出し手となってチャンスメイクにも絡む。だが、ゴールは奪えていない。最後の最後で仕事をできるのはやはり大儀見の力あってこそだ。
イブラヒモビッチはかつてあるインタビューで「俺がPSGを高みに導いた」と言い放った。それは全く間違っていない。現にクラブ通算最多得点の記録を塗り替え、圧倒的な支配力でフランスのDFたちを震え上がらせてきた。わかりやすく言えば自己顕示欲とプライドの塊だ。
宮間は言った。「終わったわけではない」と。だからこそ最後の希望をつかむため、ある程度守備を犠牲にしてでも大儀見にはその豊富な経験や知恵、技術を生かしてゴールを奪う仕事に専念すべきではないか。今求められているのは勝負を決める一発だ。
すでに日本はリスクを冒さなければならない状況まで追い込まれた。あらゆる策を講じ、貪欲に勝利を掴まなければならない。まさにイブラヒモビッチの言葉を借りれば「Risk everything is not an option. It’s mandatory」=「リスクを冒すことはオプションではない。義務だ」と言える。
崖っぷちに立たされたなでしこジャパンの選手たちが一皮剥け、最後の最後で歓喜に沸く姿を見ることはできるのか。そのためには、大きな変革が求められている。
【了】