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カタール、W杯準備は順調か? ホスピタリティと労働環境。知られざる舞台裏【潜入レポート】

text by 森本高史 photo by Takashi Morimoto , Supreme Committee for Delivery & Legacy

充実した商業・医療施設。出稼ぎ労働者にも手厚いサポート

工事現場には安全に配慮した注意書きがある【写真:Supreme Committee for Delivery & Legacy】
工事現場には安全に配慮した注意書きがある【写真:Supreme Committee for Delivery & Legacy】

 南アジア諸国ではサッカーも盛んであり、別のスタジアムでサッカーの大会が開催され、数多くの労働者がボールを蹴っている。優勝チームには賞金が出るということもあり、賞金を得れば故郷で待つ家族により多くの仕送りができる。労働者たちが休日に家で寝ているのではなく、スポーツに興じやすいよう、うまくアレンジされている。

 プレーするスポーツだけでなく、観るスポーツについても、観る側にとって価値の高いものが提供される。たとえばサッカーのネパール代表は、ここ2年で2回カタールに招待され、国際試合を行っている。この試合には、サッカーに熱狂的なネパール出身の多数の労働者が駆けつけ母国を応援した。母国を離れている彼らにとっては、この上なく熱狂的だったろう。

 イスラム教の寺院であるモスクでは、1日5回の礼拝が行われ、ここには労働者のみならず近隣住民も訪れる。仕事仲間以外の友人、知人と交流する絶好の機会だ。ショッピングモールも併設され、スーパー、カフェ、携帯ショップ、書店、両替屋に加え、映画館もあり、民族舞踊や音楽を鑑賞することもできる。

 このように労働者にカタールでは充実した環境が提供されており、ドバイ在住で、フランスフットボール誌の中東通信員を務めるダフララー・ムアドヘン記者は次のように語っている。

「建設労働者問題は、世界中で危惧されている深刻なものの一つ。なかには、水もないトイレもないテントに労働者を住ませている国も少なくない。しかしながら、カタールにとっては全く無縁。労働者は、会社の重役のような手厚いサポートを受けているから」

 サポートという意味では、アル・タワディ氏は「細心の注意を払っているのが医療」と続ける。レイバー・シティ内には最新の医療器具を完備した病院が作られ、無料で診察を受けられる。ドクターを務めているのは、主にカタール在住歴の長いインド人だ。患者と同じ言語で会話し、生活上のアドバイスができるのは重要である。

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