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日本代表 8年前

シリア代表が戦う意義。日本とは異なる“背負うもの”。明日なき人々の希望に

text by 植田路生 photo by Getty Images

国内情勢不安のなかチームは団結、そして躍進

 そんななか、シリア代表は躍進している。W杯アジア2次予選では日本に次ぐグループ2位。ここまで6勝1敗の好成績で、3次予選進出は確実な状況だ。

 国内情勢が厳しいなかでの快進撃は、2007年アジアカップでのイラク代表を想起させる。2003年より続いたイラク戦争の影響で国内情勢は混乱の極地に達し、大会中も自爆テロで多くの国民が亡くなったばかりか選手の親族にも被害者が出たという。

 そのような状況下でイラク代表は団結し、オシムジャパンがベスト4に終わった大会で初優勝を遂げた(もちろんアジア屈指の名手ユニス・マフムードやアテネ五輪ベスト4のメンバー、ナシャト・アクラムらクオリティの高い選手が揃っていたことは忘れてならないが)。

 皮肉なもので、ピッチ外で大きな問題が起こると代表チームが強固なまとまりになることはしばしばある。2006年ドイツW杯でイタリアが優勝したとき、セリエAは八百長スキャンダルで揺れていた。

 日本代表ハリルホジッチ監督も警戒する。「罠にかかってはいけない。シリアは我々のリズムを壊してくる。演技もするだろう。シミュレーションもある」。

 これは冗談ではなく本音だ。オマーンでの前回対戦時に取材したが、シリアの選手たちは日本のリズムを壊すかのようにわざと単調なロングボールを放り込み、またファウル覚悟の激しい当たりで止めに来ていた。結局3-0で日本が勝利したが、前半は思うようなリズムがつくれず苦戦を強いられた。先制点が遅ければ、すさまじい時間稼ぎ攻勢をくらったかもしれない。

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