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コンテ就任でチェルシーはどう変わるか。鍛錬主義の“イタリア版モウリーニョ”が挑むどん底からの再出発

チェルシーは、来季からの新監督に現イタリア代表のアントニオ・コンテ監督が就任することを発表した。今季はジョゼ・モウリーニョ前監督を解任し、ロマン・アブラモビッチ政権で最低成績が濃厚というどん底からの再出発となるコンテ監督だが、“イタリア版モウリーニョ”は過去の失敗を教訓とできるだろうか。
(取材・文:山中忍)

text by 山中忍 photo by Getty Images

チェルシー、コンテ就任でどう変わるのか?

コンテ
来季からチェルシーの監督に就任するアントニオ・コンテ【写真:Getty Images】

 去る4月4日、来季からのチェルシー正監督として、3年契約でのアントニオ・コンテ就任が発表された。2003年のロマン・アブラモビッチによるクラブ買収以来、通算10度目の監督交代。04年のジョゼ・モウリーニョ就任以来、最も重大な監督人事でもある。新監督は、強豪としての黄金時代をもたらしたモウリーニョの2期目が早期終焉を見た今季、プレミアリーグ6位に終わった4年前を下回る、アブラモビッチ政権下での最低順位が濃厚なチームを立て直す任務に就くのだ。

 コンテという人選には「モウリーニョと似ている」との声が多い。良い意味での共通点は飽くなき勝利意欲。MFだった現役時代にはCL優勝経験も持つ46歳のイタリア人指揮官は、実子を母国語で「覇者」を意味する「ビットリア」と名付けるほど勝利へのこだわりが強い。そのためには、曰く「1日16時間」を仕事に割く覚悟を持つ。EURO2016を以てイタリア代表での監督職を辞す理由にも、はるかに高密度なクラブ監督職への復帰を望む意思があった。

 勝利を実現する手段も積極的。監督として初成功を収めたバーリでは、ウィンガーを押し上げた4-2-4を基本システムとしていた。ユベントス時代も、チェルシーでの採用があり得る3-5-2が代表的。最前線にはストライカー2名を好む。この点はモウリーニョと異なるが、攻撃的スタイルの確立を願うオーナーの志向と一致する。

 逆に不安視される共通点は監督としての「鍛錬主義」。今季チェルシーの不振が長引いた原因には、打ちすぎたモウリーニョの鞭が選手の心を折ってしまったこともあるに違いない。その正式な後任となるコンテは、メディアで「イタリア版モウリーニョ」とも言われる監督。ユベントスと代表でコンテ体制を知るアンドレア・ピルロは、自伝の中で「監督のメッセージは荒々しく選手の心に突き刺さる」と証言してもいる。

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