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「代表監督」と「クラブ監督」を区別する言語も。用語の違いから考える「監督」の役割【サッカー用語の基礎知識】

知っているようでよく理解できていない、そんなサッカー用語を普段見聞きしていることはないだろうか。特に疑問を持たれていない語であっても、実は誤った使い方をされているものもあるかもしれない。本連載では、語彙の面からサッカーに迫っていく。第一回は外国語の用法を参照しながら、「監督」について掘り下げる。(文:実川元子)

シリーズ:サッカー用語の基礎知識 text by 実川元子 photo by Getty Images

フランス語では「選抜者」となる代表監督

ディディエ・デシャン監督
フランス代表のディディエ・デシャン監督【写真:Getty Images】

 サッカーファンとしてわかっていたつもりのサッカー用語が、肝心なところで意味をきちんと理解していなかったと気づくことがときどきある。基礎用語をあらためて調べ直してみると、言葉が生まれた背景や意外な使われ方の発見が数々あるではないか!

 そんなトリビア的知識をあれば、きっとサッカーを見るときにもっとおもしろく楽しくなるに違いない、というところで、今さらながらの「サッカー基礎用語集」である。

 今年は欧州選手権とオリンピックの年。そこで何かとメディアに露出する機会が多い「監督」という肩書について調べてみた。

 サッカーの「監督」とはいったい何をする人なのか? クラブチームとナショナルチームでの肩書はどうなっているのか? わかったことは、日本における「監督」という肩書は、世界のサッカー界から見るとかなり特殊だ、ということだった。

 5月13日、フランスではディディエ・デシャンが6月10日に開幕する欧州選手権に臨むフランス代表チームのメンバーを発表した。フランスサッカー連盟にあがっている映像で、デシャンのフランス語での肩書を見ると、”Selectionneur de l’Equipe de France”となっている。

 セレクシオヌール(Selectionneur)を辞書で引くと、「選別する人」「スポーツ(公式チームの)選手選考委員」とある。つまりデシャンは「フランスチームの選手選考をする人」という肩書なのだ。

 調べてみると、フランスではサッカーやラグビーなどのナショナルチームの指揮官にこの肩書が使われており、クラブチームの指揮官の肩書であるentraineur(アントレヌール:トレーナーの意)とは一線を画している。

 アントレヌールとセレクシオヌールでは課せられている仕事の内容が違う、と明確に定義されている。

 アントレヌールが選手たちのフィジカルやメンタルを鍛え、技術を指導し、チームとしての戦術を叩き込む、つまりは現場の指揮官としての仕事を課せられている。

 それに対し、セレクシオヌールはそれらの仕事に加えて、いやそれ以上に、選手を選抜することが大きな仕事であり、そこに一番の責任を持つ人、とされている。

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