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EURO2016 8年前

フーリガン報道にまみれたEURO。ピッチ上の激戦を覆い隠した場外の暴動【現地レポート】

グループステージの段階からピッチ上で激戦が続くEURO2016。そのいっぽうでピッチ外でのフーリガン暴動も起きてしまい、それらが今大会の報道でかなりの割合を占めてしまっている感もある。試合報道が押しやられている状況に、残念な思いは増すばかりだ。(文:小川由紀子【パリ】)

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

好ゲームが続くピッチ上の戦い

マルセイユではサポーター間の衝突が起きた
マルセイユではサポーター間の衝突が起きた【写真:Getty Images】

 今回のユーロは、毎試合が本当に接近戦だ。スペインがトルコを、ベルギーがアイルランドを3-0で下した以外は、グループリーグの第2回戦終了時点で、ほとんどの試合が同点か1点差だ。決勝点が80分を過ぎた終盤に決まる、という試合も多い。最後の最後まで力がぶつかり合い、ほんのわずかな差で、勝敗が決まっている。

 初出場の5チーム、アルバニア、スロバキア、北アイルランド、アイスランド、ウェールズも奮闘している。スロバキアはロシアを下し、ウェールズは初戦でスロバキアを破ったあと、第2戦ではあわやイングランドと1-1のドロー、というところまで食い下がった。スタリッジが90分にゴールを決めて2-1でイングランドが逆転勝ちしたが、ドローのままなら、グループ内首位に立っていた。グループBでは、初出場のこの2チーム、スロバキアとウェールズに、次ラウンド勝ち抜けのチャンスが残っている。

 北アイルランドも、初戦はポーランドに1-0で敗れたが、ウクライナを破って、初出場にして初白星をあげた。アイスランドにいたっては、クリスティアーノ・ロナウド擁するポルトガルを1-1のドローに抑え、2戦目もハンガリー戦に1-1のドローといまだ無敗。もっともこの試合は試合終了間際の88分に痛恨のオウンゴールを献上してしまった。これがなければ初白星!となっていたわけだが、試合全体を通してみれば7割近くボールを占有し、果敢にビルドアップを試みたハンガリーにも分があったから、公平な結果ではあった。

 唯一、2つの黒星を喫してしまったアルバニアだが、初戦のスイス戦、そして次のフランス戦ともども、決して相手に楽勝などさせず、たっぷり汗をかかせた好戦だった。とくに2戦目の対フランス戦は、地元チームを相手に最後の最後まで懸命に守った。グリーズマンの先制点は、UEFAの記録では90分。

 そこで心の糸が切れたのだろう。そのあとパイエに2点目も許したが、がっくりとうなだれる選手たちの姿からは、限界まで力を出し切っていたことがありありとうかがえた。

 こんな試合ばかりだから、どのチームにも勝って欲しくなってしまう。負けたチームには心が傷み、傷心の毎日だ。それは選手の懸命さが伝わって来るからで、彼らのピッチ上での真剣さというのは、それだけ人の心に響くものなのだとあらためて思う。

 それだからこそ、残念に思うのが、場外の事件だ。

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