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英国のEU離脱がサッカーに与える影響は? 今日運命の投票、意外な楽観視の理由

イギリスは本日23日、EU離脱の是非を問う国民投票が行われる。離脱か残留かで国内の意見は二分しているが、仮に離脱した場合はサッカーにどのような影響を与えるのだろうか。離脱となれば世界の経済に大きな打撃を与えるといわれているが、サッカーの面においては国内で楽観視する見方もあるようだ。(取材・文:山中忍【ロンドン】)

text by 山中忍 photo by Getty Images

EU離脱か残留か。揺れる英国

英国
英国はEU離脱の是非で揺れている【写真:Getty Images】

 イングランド代表が出場24ヶ国の欧州選手権から追放されるかもしれないと言われたのは、ロシアとのEURO2016初戦でサポーター同士が暴動騒ぎを起こした6月11日。それから2週間足らずで、今度は母国そのものが加盟28ヶ国の欧州連合から抜けてしまうかもしれない。

 英国EU離脱の是非を問う23日の国民投票は僅差の様相を呈している。デイビッド・キャメロン首相は「残留」の支持派だが、自身が党首を務める保守党内でも議員の半数が「離脱」に傾いているとも言われる。庶民の生活に国際色が薄い地方を訪れてみれば、離脱キャンペーンの勢いが勝っているようにさえ感じられる。

 離脱を求める人々が掲げる理由の1つが、増え続ける移民の制限。近年の英国では、ポーランドやクロアチアといった東欧諸国の他、イタリアやスペインといった国々からも安定収入を求める移住者が増えた。EU加盟国間では国民の自由な行き来が前提。就労目的の渡英でも労働ビザは必要とされない。

 プロのサッカー選手も同様だ。オランダやドイツといった欧州他国に比べてイングランドのプロリーグ(4部まで)に日本人選手が少ない背景には、ご承知の通り労働ビザ取得条件がある。EU圏外の外国人選手は、ビザ申請前の2年間に祖国のA代表選手として基準とされる出場試合数を満たしていなければならない。祖国がFIFA(国際連盟)のランキング10位以内であれば代表戦の30%、11~20位なら45%、21~30位は60%、そして31~50位の場合は75%という厳しい条件だ。

 一方、EU加盟国のパスポート保持者であれば、イングランドのトップリーグでの就労に際してもビザは不要。外国人選手の多さが指摘されて久しいプレミアリーグでは、昨季も432名(BBC調べ)のEU国籍選手が雇用されていた。国民投票で「離脱」が決まったとして単純に現行の条件を適用すると、432名中100名を超す選手にビザが下りないという。

 プレミアでのプレーが許されないEU国籍選手には、奇跡の優勝を果したレスターでカウンターの起点となったエンゴロ・カンテと、昨季プレミア最高級の新戦力となったウェストハムのディミトリ・パイェも含まれる。揃って今夏のEUROではフランス代表の主力だが、過去2年間での出場試合数が足らないのだ。

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