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「90分間プレッシングを続けることは不可能ではない」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

圧倒的に予算の少ないクラブをリーガ1部に残留させ続け、なおかつ超攻撃的なフットボールを展開することで注目を集めたラージョ・バジェカーノとパコ・ヘメス監督。15-16シーズンには惜しくも2部降格となってしまったが、彼らが残した印象は計り知れない。16-17シーズンより、グラナダの指揮を執ることになったパコ・ヘメスだが、ラージョ時代のインタビューをお届けする【前編】。(取材・文:江間慎一郎/『欧州フットボール批評 special issue 01』より転載)

シリーズ:超攻撃的フットボールの美学 text by 江間慎一郎 photo by Shinichiro EMA , Getty Images

現代フットボール界における異端者

ラージョで超攻撃的サッカーを披露していたパコ・ヘメス
ラージョで超攻撃的サッカーを披露していたパコ・ヘメス【写真:Shinichiro EMA】

 パコ・へメスは現代のフットボール界における異端者である。スペイン代表にも選出された現役時代にセンターバックを本職とした男は、監督となってから超が付く程の攻撃的フットボールを志向。

 リーガエスパニョーラ1部の中でも最少規模のラージョでそれを実践するという無謀ぶりながら、2年連続で残留を果たすなど着実な成果を収めている(※ラージョ監督として4年目の挑戦となった2015-2016シーズンに2部降格を味わうも、今夏に中国のスポーツマーケティンググループ“デスポーツ”によって買収されたリーガ1部グラナダの監督に就任)。

 だが彼が欲する成果というものは、美しいパフォーマンスの上に成り立っていなくては意味がなく、それ以外は不当なのである。彼が無謀な夢想家なのか、我々が打算的になり過ぎたのか。いずれにしても、P・へメスはフットボールに全身全霊を捧げる。勇敢に立ち向かうものと定義する、人生そのものに見立てて……。

――1000万ユーロ弱と、リーガ1部においてはエイバルに次いで予算の低いラージョ・バジェカーノですが、なぜこの舞台で戦い続けられるのでしょうか?

パコ・へメス(以下、P) 一概には言えないが、困難な状況の中で、各々が懸命に仕事を行っているからだろう。私のラージョは3シーズンにわたってここに残り続けている。その秘密?

 たゆまぬ努力と確固たる信念、また雄弁に語りかけてくる理論に一切耳を傾けないことだ。我々は毎シーズンにわたって新たなアイデアを生み出し、不可能を可能に変えられることを証明しなければならない。とても難しいことではあるがね。

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