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小野伸二が後押しした楠神順平の豪州挑戦。“ワンダーランド”で愛される存在になれるか

過去5年間で3人の日本人プレーヤーが所属をしてきたAリーグの強豪ウエスタンシドニー・ワンダラーズ(WSW)に4人目の日本人プレーヤーが加入した。サガン鳥栖に所属していた楠神順平である。この移籍の決断には日本でもプレーした経験を持つWSWのポポヴィッチ監督の"日本びいき"と"レジェンド"小野伸二の後押しがあった。(取材・文:植松久隆【ブリスベン】)

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu

小野伸二の成功がもたらした”日本びいき”

小野伸二
WSWでいまだに愛される小野伸二【写真:Taka Uematsu】

 かつて小野伸二が所属したことでも知られるAリーグの強豪ウエスタンシドニー・ワンダラーズ(WSW)。2年前にはACL王者に輝いた新興クラブは、既に創設5年の間に4人の日本人選手を獲得してきた。Aリーグでプレーした日本人は、ゲストプレーヤーで短期間プレーした三浦知良を含めて11年間で延べ11人。そのうちの実に4割近くをWSWが占める計算だ。これを見ても、他のクラブに比してWSWの日本人選手への傾倒ぶりが抜きん出ていることがよく分かる。

 この傾倒ぶりは選手の獲得に関して、全権を持つトニー・ポポヴィッチ監督の志向によるところが大きい。自らも4年の日本でのプレー経験を有するポポヴィッチは、就任時から変わらず日本人選手獲得にアンテナを張ってきた。

 そして、初年度に獲得した小野伸二の成功が、彼とクラブ首脳陣の”日本びいき”を強固なものとした。クラブのレジェンドとなった小野の退団後も、高萩洋次郎、田中祐介が同時に入団して熱狂的なサポーターを納得させる活躍を見せた。その2人が共にクラブを去ることになった時、多くの惜しむ声が上がったのも記憶に新しい。

 そういったこれまでの積み重ねの下で育まれてきたWSWと日本人選手の濃密な関係。そこに今回、新たな”第4章”が書き込まれることになり、その主役に抜擢されたのが楠神順平。

 昨季、惜しくもタイトルを逃したWSWが、今季の攻撃陣の中心選手としての活躍を期待して獲得した楠神は、あの野洲高校の”セクシー・フットボール”の看板役者の一人。進学した同志社大学在籍時に川崎フロンターレに特別指定選手として所属。そこでJデビューを果たすと、川崎、セレッソ大阪、サガン鳥栖と移籍しながらJリーグ通算142試合出場の実績を積み上げてきた技巧派MFだ。

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