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ネイマールをセレソンの中心に。ドゥンガ監督第二期。闘将がクラッキを主将にした理由【フットボールと言葉】

異なる言語間では、翻訳困難な語は無数にある。それはフットボール界においてもしかり。外国のフットボーラーが語った内容を、我々はしっかりと理解できているのだろうか。選手、監督の発した言葉を紐解き、その本質を探っていきたい。今回は、リデランサ(リーダーシップ)をキーワードに、前ブラジル代表監督ドゥンガのサッカー観を紐解いていく。ブラジル代表監督に復帰したドゥンガは、なぜ2010年W杯で招集外としたネイマールを主将に据えたのだろうか。(取材・文:竹澤哲)

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲 photo by Getty Images

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悲劇的敗戦で失墜したブラジルサッカー

2014年、ブラジル代表監督に再就任したドゥンガ
2014年、ブラジル代表監督に再就任したドゥンガ【写真:Getty Images】

 2014年、ワールドカップ・ブラジル大会においてメキシコのTV、ガウガジーラのコメンテーターをしていたドゥンガに再びチャンスが巡ってきた。

「代表監督を退いて以来、私はいろいろな書物を読んだし、各地を回り、たくさんの代表を観察することもできた。ワールドカップ期間中には同じく解説者を務めていたアリゴ・サッキとよく一緒にカフェへ行き、たくさんの話をする機会に恵まれた。彼といろいろと意見交換することもできたのだ」

 ドイツに対しての屈辱的な敗戦を目の当たりにして、ドゥンガは何かしなければいけないと、使命感のようなものを強く感じたのだろう。その気持ちが監督を再び引き受けた動機となったはずだ。

「全てのブラジル人が同じ感じ方をしたと思うが、私は、目の前で起きていることが信じられない気持ちだった。あたかも夢をみているかのようで、現実で起きていることだとは思えなかった。私もサポーターも、まさにショックを受けていたのだ。現実に起きていることとはとうてい思えなかったのだ」

 しかしドゥンガに課せられた使命は、失墜したブラジルサッカーを復興するという非常にきびしいものだった。

 2014年10月にシンガポールで行われる日本戦を前にTBSがブラジルでドゥンガにインタビューを行っている。そこで監督就任を引き受けた理由などについて語っている。

「私が監督を再び引き受けたのも、とても大きな挑戦であるからだ。このようなチャンスを得られる人はごく少ないはずだ。監督として試合に臨むわけだが、これまでセレソンの中で働いてきた者として、このようなチャンスが現れたのだから、再びいい仕事をしたいと思うのは当然だろう」

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