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イングランド代表監督、潜入取材で不正関与を暴かれ解任の可能性も

text by 編集部 photo by Getty Images

アラーダイス
イングランド代表のサム・アラダイス監督【写真:Getty Images】

 イングランド代表監督に就任したばかりのサム・アラダイス氏にスキャンダルが発覚した。

 国際サッカー連盟(FIFA)やイングランドサッカー協会(FA)によって定められた第三者(クラブ以外の投資ファンドなど)による選手保有を禁止するルールをかいくぐるための指南役として大金が絡んだ契約を結んだという。

 これは英紙『テレグラフ』による10ヶ月間の潜入取材によって暴かれた。同紙はイングランドサッカー界の商業主義と腐敗について調査取材を行っており、その一環として同国代表監督の不正関与に行き着いたと見られる。

『テレグラフ』紙はアラダイス監督本人のミーティングの様子を隠し撮りし、その証拠を押さえて一般に公開した。秘密会合はロンドンとマンチェスターで2度にわたって行われ、合計4時間にも及んだとされる。

 その中でアラダイス監督はアジア企業の代理人とされる人物と接触し、サッカー界ではご法度になっている第三者による選手保有を実現させるアドバイザーに就任する契約を結んだ。これにより40万ポンド(約5200万円)という高額な報酬が発生するはずだったが、現実は甘くなかった。アジア企業の代理人としてやってきた人物は『テレグラフ』紙の記者だったのだ。

 最初の会合はイングランド代表監督就任が発表された直後の8月にロンドンで行われ、アラダイス監督とその代理人のマット・カーティス氏、財務顧問のシェーン・マロニー氏、長年の友人でありおとり記者の関与を知らずアラダイス氏とアジア人代理人をつないだスコット・マクガーヴェイ氏が同席したという。

 2度目の会合はマンチェスターで行われ、アラダイス監督が今後シンガポールに渡航することや契約について話し合われたようだ。

 それらの中で選手の第三者保有に関して問われたアラダイス監督は「全く問題ない」と答え、「南米全域やスペイン、ポルトガル、ベルギー、それにアフリカでもやっている」と説明した。

 また、自らがウェストハムを率いていた2014年にメキシコのパチューカから1200万ポンド(約16億円)の移籍金で獲得したエネル・バレンシアは、イングランド上陸時に取引に絡んだ両クラブ以外の第三者に保有権の一部があったことも明らかにした。

 前述した報酬40万ポンドのアドバイザー契約には、架空の会社が保有する選手をイングランド代表監督の権限を使って優遇するという条件も含まれており、アラダイス監督にはルール違反だけでなく職権乱用の疑いもかかっている。

 ルール違反を促進するような発言の他にも、EURO2016で失態を演じたロイ・ホジソン前イングランド代表監督を「とんでもなく優柔不断だった」などとこき下ろすなど、不適切な発言の数々も暴露されたアラダイス監督。英紙『ガーディアン』などによればFAが本人への事情聴取など調査に乗り出すという。

 イングランド代表の立て直しを託され、新体制でスタートを切ったばかりの中、その中心として振る舞うべき人物にあってはならないスキャンダルにサッカーの“母国”が揺れている。『テレグラフ』紙は音声など数々の証拠を押さえているとされており、このままでは就任からわずか2ヶ月での監督交代は避けられそうにない。

【了】

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