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昌子源に直撃。「なんでトゥールーズに来たんだよ!?」“野望のない”クラブで抱く覚悟とは

text by 小川由紀子 photo by Yukiko Ogawa

「なんでトゥールーズに来たんだよ!?」

 地元紙のスティバル記者も、「会長に野心がないと知って、やる気のある選手は他のクラブに去っていってしまう。でも、引き止めるために同じ規模のクラブの中ではサラリーを高めに設定しているので、そこで満足してとどまる選手もいる。それがいまのトゥールーズです」と教えてくれた。

 そして、その状況になんとなく慣れっこになっている、ほんわかとした感じがこのクラブには漂っている。サポーターが選手に厳しくプレッシャーをかけることもなければ、負けて怒りをぶつけることもない。

「負けているのにめっちゃ笑顔でファンが(自分のところに)来たりするんです。鹿島だったら負けてたら『なにやってんだよー』みたいな感じでくるんですけど…」と昌子も戸惑っている様子だったが、サポーターも、「このクラブはプレッシャーが少ないから、初めて海外移籍した昌子にとってはきっと良いと思う。ここで慣らして、もっと大きいクラブへ羽ばたくといいよ」と、自ら「踏み台」発言である。

 入団早々、昌子はチームメイトに、「おまえ、優勝経験あるのか?」と聞かれたそうだ。

「あるよ、カップ戦とかアジアを入れて6、7回くらいかな…」と答えると、全員が「ほんとかよ! おまえすげえな~!」と驚き、「なんでトゥールーズに来たんだよ!?」という勢いだったという。

「僕はタイトルをとってきて、勝ち方、優勝の仕方もある程度染み込んでいて、そこからあまり勝てないチームに来ると、『勝ちてえな』と思う。サッカーはやっぱり勝ってなんぼだと思うし、優勝を6回もしていたら、また優勝したくなる」

 タイトルを獲る感触を、一回味わっているのと味わっていないとでは違うのだ。

「その喜びを知りたいし、優勝したいという気持ちを常に持っていないといけないと思う。僕はこのチームに途中から入って、今シーズンはもう優勝は無理だと思いますが、来シーズンのあたま、じゃあ、パリ・(サンジェルマン)がいるから、と思ってやるのと、いや、パリがいてもとにかく優勝を目指す、と思ってやるのとでは全然違う。そういうメンタリティは、新加入だから、というのとは関係なく注入していけたらな、と思いますね」

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