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2013補強診断 11年前

2013シーズンのJリーグを占う。各クラブの戦力補強診断 ~大宮アルディージャ編~

text by 編集部 photo by Kenzaburo Matsuoka

ベルデニック監督が行った改革

 2012シーズン途中まで指揮を執った鈴木淳監督は、攻守のバランスを整えながらポゼッションを高めて行くサッカーを志向していた。その中心となっていたのは、1トップに入ることの多かったラファエルとトップ下に入る東慶悟の関係性だった。ラファエルは中央に張るだけでなく、サイドにも流動的に流れてボールを受けるタイプの選手で、その空いたスペースを東や渡邉大剛、チョ・ヨンチョルらの2列目の選手が飛び出して使っていく。

 昨シーズン獲得したチョ・ヨンチョルや下平匠といった選手は、足もとの技術に長けており、鈴木監督の目指すスタイルに適合した選手たちだったと言えるだろう。目指す方向性は間違っていなかったとは思うが、結果としてみると、得点数は2年連続で38、失点は2011が45、2012が48と、十分にそのスタイルが浸透したとは言えない。3年連続で終盤まで残留争いに巻き込まれたことが、それを象徴している。

 鈴木監督がチームを離れ、ズデンコ・ベルデニック監督が就任してからの大宮は、少しずつそのスタイルを変えていった。ベルデニック監督は失点の多かった前半戦の戦いを反省し、まずは守備意識を徹底させることに心血を注いだ。またチームも積極的な補強策に打って出だ。夏のウインドウでラファエルがボタフォゴへ移籍してしまったものの、神戸から河本裕之を獲得、そしてスロベニア人のズラタンとノヴァコビッチをチームに招き入れた。


ズデンコ・ベルデニック監督【写真:松岡健三郎】

 ベルデニック監督のチーム改革と、夏場に獲得した選手がすぐにフィットしたことで、チームの成績は少しずつ上向き、最終的に残り11試合を負け無しで乗り切り(この間の失点数は僅か4)、最終節を残して残留を果たしたのだ。

 今シーズンの大宮は、チームを残留に導いたベルデニック監督が引き続き指揮を執る。鈴木監督時代と比較して大きく変化したのは、守備意識が徹底されたことだけでなく、それと合わせ攻撃のスタイルもよりシンプルなものになったことが挙げられる。ズラタンやノヴァコビッチといったタレントがチームに加入したこと、そして残留争いの渦中で結果を求められたことで、守備偏重の戦いを強いられたことも要因としては挙げられる。

 ベルデニック監督は確かな手腕で昨シーズンの後半戦を乗り切ったが、果たして今季も同じような考え方でチームを作っていくのだろうか。補強の状況から、その方向性を測ってみたい。

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