東京V、悲願のJ1昇格へ――。冨樫監督が掲げた2ヶ条の哲学と“緑の血”が受け継ぐDNA
東京ヴェルディが絶好調だ。約3年ぶりとなる4連勝をすべて完封で飾って3位に浮上し、クラブワーストの20位に甘んじた昨シーズンから一転、J1昇格争いに割り込んできた。J2全体を見渡せば、31得点こそ8位とやや物足りないが、23失点は4番目の少なさで踏ん張っている。数字の上では堅守速攻型に映るJリーグ黎明期の名門軍団はいま、日本リーグ時代から受け継がれてきたパスサッカーのDNAを再び発動させようとしている。復活の狼煙をあげるまでの舞台裏を、冨樫剛一監督に直撃した。
2015年08月07日(金)10時33分配信
J1昇格へ。冨樫監督が口にした思い
意外な言葉が返ってきた。2012年6月以来となる4連勝。すべてで対戦相手を完封し、決して多くはないゴールを守り切って3位に浮上してきた軌跡を、東京ヴェルディの冨樫監督はこう振り返った。
「実は守備の練習をほとんどしていないんですよ」
東京ヴェルディユース監督から昇格する形で、自身の古巣でもあるトップチームを率いることが決まったのが昨年9月15日。託されたミッションは、解任された三浦泰年前監督のもとで失われていた攻守のバランスを取り戻し、20位に低迷していたヴェルディをJ2に残留させることだった。
果たして、トップチームを初めて指揮した当時43歳の青年監督はそれまで冷遇されていた30代のベテラン、MF中後雅喜とFW平本一樹を先発に復帰させて、まずはチームに落ち着きを与えた。
そのうえでコーナーキック時の守備をゾーンからマンツーマンに変えるなど、可能な限り失点を減らす戦い方に方向転換。残された11試合を3勝6分け2敗、得点こそ「7」と物足りなかったものの、失点を「6」に抑えることでJ2残留を勝ち取った。
もっとも、順位は20位。2013年シーズンの13位をさらに下回るクラブワーストであり、誰よりも冨樫監督自身が満足していなかった。引き続き指揮を執ることが決まった2015年シーズンへ。指揮官はクラブを通じてこんなコメントを残していた。
「このチームならもっとできるという未来も見えたことで、スタッフや選手とともに来シーズンのスタートから勝負したいと思って決断しました」
残留争いという呪縛から解放され、いざ、自分の色を出していく新シーズンへ。冨樫監督は2ヶ条からなる独自の哲学に則ってチームを指導してきた。