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ラ・リーガの消えた逸材たち。天国から地獄へ…才能を開花させられなかった5人の選手

才能を高く評価されていても、真の意味でスターになれるのはほんのひと握り。若くして華々しいデビューを飾りながら、サッカー界の厳しい競争に晒された末に才能を開花させられないまま転落していった逸材たちは無数にいる。今回は21世紀に表舞台から儚く消えていったスペイン、ラ・リーガ出身の5人の“元逸材”たちを紹介する。

シリーズ:編集部フォーカス text by 編集部 photo by Getty Images

スピードだけでは生き抜けず

ディエゴ・カペル
【写真:Getty Images】



ディエゴ・カペル(元スペイン代表)

生年月日:1988年2月16日
現所属クラブ:無所属

 鮮烈なブレイクだった。セビージャでのトップチームデビューは2004/05シーズンだったが、長い下積み期間を経た2007/08シーズンに圧倒的なスピードでラ・リーガを席巻する。カペルの左サイド突破を1対1で止められるDFはほとんどいなかった。
 
 ホセ・アントニオ・レジェスに次ぐクラブ史上2番目の若さでトップチームに到達していた若者は、豪快な左サイド突破で一躍注目の的となる。一方で対戦相手による徹底的な研究で、2008/09シーズンは自慢の縦への突破を封じられることも増えた。

 スペイ代表でもクラブでも活躍は長続きしなかった。原因は右足をほとんど使えず、縦へのスピードを生かした突破以外のプレーの選択肢が限られていたからだった。カットインやパスといったバリエーションがなく、2年目の壁にぶち当たったカペルは長い停滞のトンネルに迷い込んでいく。

 トップチームで継続的に試合出場を重ねるようになってから4年目の2010/11シーズンには、ついにリーグ戦で無得点に終わり、2011年夏にポルトガル1部のスポルティングCPへと放出された。だが、一向にプレーの幅が広がることはなく、1年目のリーグ戦26試合出場4得点5アシストを頂点に成績は下降していった。またもセビージャ時代と同じ壁にぶつかったのである。

 スポルティングCP時代には股関節や内転筋の負傷にも悩まされ、自慢のスピードすらも失われていった。2015/16シーズンにセリエAのジェノアで1年プレーしたのち、2016/17シーズンはベルギーへ渡って強豪アンデルレヒトに所属するも出場機会は限定的で、契約を延長せず1年で退団。

 29歳にして元スペイン代表選手が無所属になってしまった。1年の浪人期間を経て、2018/19シーズンはスペイン2部のエストレマドゥーラに加入するも往時の輝きを取り戻せず。シーズン終了とともに再び無所属となり、2020年1月まで新たな所属クラブが決まらなかった。

 2度目の無所属期間を経て、見つけた新天地はマルタだった。地中海に浮かぶ島国のリーグは、欧州でもマイナー中のマイナーで、レベルもかなり低い。ただ、そんな環境ですらも苦しんだ。移籍以降、新型コロナウィルスの影響によってリーグ戦が中断するまで5試合あったが、ピッチに立ったのは2試合で合計29分間のみ。そしてシーズン終了後に退団。あまりに強烈な武器を持って、それに頼りきりだったかつての逸材は、何もかもを失って欧州の最底辺でもがき苦しんでいる。

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