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【日本初公開!! ロングインタビュー】ジョゼ・モウリーニョ ~スペシャルワン、かく語りき~

text by ヴァンサン・マシュノー photo by Kazuhito Yamada

クラブに求められる要求の高さ

――あなた自身がレアルにとって最良の“ミスター”だと思いますか?

「レアルで監督を務めるには、クラブのレベルと求められる要求の高さ、激しい批判に抗えるだけの経歴が必要だ。こんなクラブは他にはない。地元のプレスが味方にならない世界で唯一のクラブだ。他はたとえばガゼッタ(デロスポルト)でもトゥットスポルトでも…」

――すべてがあなたに反対というわけでもないでしょう。

「(話をさえぎって)ほとんどすべてのプレスがそうだ! 私に反対なのではなく、レアルを批判している。私(への批判)はその結果にすぎない」

――しかしあなたには味方もいます。そんなに敵が多いと思っていますか?

「わからない。攻撃してこようとこなかろうと、私には同じことだ。残念に思うのは、個人の興味や利益が、ジャーナリストとしてどれだけいい仕事をするかというプロ意識を上回っていることだ。私には、それぞれが自分の興味や利益を語っているようにしか見えない。

 1つ例をあげよう。たとえばラジオが深夜12時に私を番組に招待する。私はその時間は眠っているからと断る。当然だろう。深夜12時だぞ。彼らは私を破滅させようとしている。だがまあいい。ここで監督を務めるには過去の経歴と結果が必要だし、経験の蓄積と高い評価が必要だ。それがあってはじめて、周囲に煩わされることなく仕事ができる。過去の経験がない若い監督は、ここでは仕事はできない。私ですらレアルで仕事をするのは怖いし、選手もそれは同じだ」

――今の選手たちもそうですか?

「ファビオ・コエントランを見ろよ! 彼は世界最高の左サイドバックという評価でマドリードにやってきた。そんな選手を、よってたかってぶち壊してしまったのだからな。少なくとも彼の本来のレベルとはかけ離れたところまで突き落とした。EUROで彼は、大会最高のサイドバックの1人として評価を再確立した。しかしここレアルでは、今も私が知っているコエントランではない。それだけこのクラブは、選手をとりまく環境が複雑なんだ。

 だから私がレアルにうってつけの監督かどうか君は聞いたけど、私にはわからない。わかるのは心理的に完璧な準備をして私がここに来たということだ。成熟し、安定したパーソナリティを築く過程で培った、10年間の強さと豊かな経験を携えて。その意味ではたしかに私には、ここで監督を務められるだけの経歴がある」

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