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Jリーグ 11年前

浦和レッズは本当に生まれ変わったのか? ~常勝クラブとなるために必要なこと~(後編)

text by 島崎英純 photo by Kenzaburo Matsuoka

予想以上にスムーズに進んだチーム構築

 ただ、シーズン開幕前こそ効果的な補強を行ったものの、浦和は夏場の移籍マーケット解禁時期にはほとんどアクションを起こしていない。当時のチームが1トップFWの人材不足に喘ぎ、得点力不足に陥っていた状況にも関わらずである。これにはふたつの思惑があったと思われる。

 まずフロントサイドとしてはできるだけ戦力補強費を抑えたい思惑があって、Jリーグクラブで出場機会を得られない安価な日本人選手などの補強資金を捻出する用意はあったものの、多大な移籍獲得資金が発生する日本代表クラスや有望外国籍選手の獲得には消極的だった点が挙げられる。

 そして現場サイドのミシャも、実力に疑いのない有力選手の獲得ならばともかく、戦力計算できない選手の獲得によってチーム構築に支障を生じさせ、かつ積極的な選手補強によって周囲のタイトル獲得機運が高まることに懸念を抱いたと思われる。

 ミシャは当初から12年シーズンを改革初年度と捉え、稚拙なタイトル希求はチーム崩壊に繋がると感じていたに違いない。だからこそミシャは当初、たとえ敗戦後であっても公の場で「今季は現有勢力で戦う」と発言し、周囲のタイトルへの欲求を鎮め続けたのだろう。

 しかしミシャにも計算違いがあった。それはチーム構築が思った以上に進み、予想以上にリーグ戦成績が上昇曲線を描いたことだ。チームは終盤戦に突入しても優勝争いを繰り広げて自力での頂点到達も見えてしまった。

 眼前にタイトルが迫ったことでミシャは突如選手たちに発破をかけ、戴冠へのモチベーションを露わにする。しかし、いきなり多大なプレッシャーに直面したチームは勝負所で敗戦を繰り返して広島、ベガルタ仙台の後塵を拝した。早熟のチームは結局、リーグ3位でシーズンを終えることとなる。

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