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チームメイトから厚い信頼を寄せられる清武。繰り出されるアシストを徹底分析

text by 河治良幸 photo by Ryota Harada

なぜアウトでスルーパスを出したのか


攻撃の中心としてアシストを積み重ねる清武【写真:原田亮太】

 空中戦を得意とする190cmの長身ストライカーだが、左のワイドに開いたポジションから、清武がパスを受けた瞬間にシャルケ右サイドバック、ヘーガーの外側からダイアゴナルに走り、オフサイドにギリギリのタイミングで裏に抜け出す。そしてGKヒルデブラントとの1対1を制し、勝利を決定付ける3点目を左足で流し込んだ。

 ここで清武が見事だったのは良いポジショニングで味方のパスを引き出しながら、受け手になる選手の動きまで読み取っていたこと。そして刹那の流れの中で、パスを受ける選手の特徴や欲しいポイントを見極めて、1つのキックに込められることだ。

 この場面では清武が前を確認した時、中央でシャルケのセンターバックと対峙している選手はいなかった。

 普通にイメージすれば、自分で縦に持ち上がるか、イルディスにリターンパスを出すか、左横のエスヴァインに預けるかの3択だろう。しかし、清武はその時点で味方の選手がいない中央、しかもシャルケDFの背後が決定的なスペースになると判断し、フランツがそこに向かって走る時にはすでに左足のパスモーションに入っていたのだ。

 そしてもう1つ注目したいのが、左足アウトで出したパスの質だ。なぜわざわざアウトで出したのか? それは左回転のスピンをかけることで、左ワイドから抜け出すフランツが縦のスピードを殺すことなくパスを受けられること。しかも、回転により相手GKの手前でボールの進行が弱まるため、飛び出しでクリアされることなく、1対1に持ち込むことができたのだ。

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