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ザックの期待に応えられなかった酒井宏樹。内田篤人との違いとは何か?

text by 北健一郎 photo by Kenzaburo Matsuoka

未完成だがポテンシャルは高いだけに…

 酒井の代名詞でもあるクロスも2、3本しか上げられなかった。酒井は常に相手の前でボールを受けるので、クロスを上げようとしても常に相手がいる状態になってしまう。イタリア戦もメキシコ戦もクロスを目の前の相手にぶつけてしまうシーンがあったが、もっと裏のスペースに飛び出してパスを受ける意識が欲しい。

 守備面に関してはザッケローニ監督から期待された空中戦はあまりなかった。ただ後半9分に左サイドからグアルダードにクロスを上げさせてしまい失点に絡んでしまった。酒井にこのシーンについて聞くと「中に絞っているのでサイドチェンジをされたところに寄せるのが遅れるのは仕方ない」という答えが返ってきた。

 ザッケローニ監督はサイドバックに対して、逆サイドにボールがあるときは中に絞れという指示を出す。ボールサイドに人数を集めて距離感を近くして奪いやすくするというのが基本コンセプトにあり、その点では酒井はセオリー通りにプレーしている。

 しかし、日本の選手が疲れから寄せが全体的に甘くなっていたことを考えれば、サイドチェンジをされることを予測してポジショニングを1、2歩でも修正しておくことはできたはず。

 セオリーを守っていたとしても失点してしまっては元も子もない。レギュラーの選手ではないだけに「監督の言うとおりにやらなければ」という気持ちが強過ぎたのかもしれないが……。

 結局、酒井は失点後の後半13分に内田と交代させられてしまった。このまま実力を発揮できなければ、ザッケローニ監督もさすがに酒井を見限らざるを得ないだろう。それでも、酒井の高速クロスや外国人選手と渡り合えるフィジカルの強さは捨てがたい。また酒井が台頭すればレギュラーの内田のモチベーションにもつながる。
 
 W杯まで1年間。日本期待の大型サイドバックは自分の殻を打ち破れるか。

【了】

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