ロンドン五輪に出場し、サッカー日本代表でもプレーした大津祐樹は、現役時代からビジネスの世界に身を置いていた。広告塔としての社長業ではないかという偏見に対し、「そんなに甘くないぞって。そんな規模じゃないですよ」と話す。(取材・文:加藤健一)[1/1ページ]
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どうせ広告塔なんでしょ?「僕、ゴリゴリに回す側の人間なんで」
2023年限りで現役を引退した大津祐樹は、翌年1月にコミットの取締役に就任した。それから2年弱が経った今年11月1日付で、代表取締役社長に就任することになる。
「『どうせインフルエンサーで、広告塔なんだろう』みたいな人もいます。サッカー選手だからそう思われがちなんですけど、僕、ゴリゴリに回す側の人間なんで」
大津のここまでのキャリアを知らなければ、冒頭で述べたように知名度を利用しただけだと勘違いしてしまうだろう。サッカースクール、人材事業など、経営してきたノウハウが約6年の間に蓄積されていた。
「僕はサッカーでリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドになれなかった。だから、ビジネスでメッシやロナウドになろうと思ったんです」
大津はサッカーキャリアと同じようにビジネスの世界でも挑戦を続けながら、その道を切り開いてきた。
「ASSISTをゼロから自分で立ち上げて、7年が経ちました。そこで積み重ねてきたASSISTでの成功体験が、この会社(コミット)の事業にも活かされています」
時計販売は未経験の業界だった。ただ、全くの素人というわけでもない。
「時計は現役のときから好きだったので、僕自身が詳しい領域ではあった。『なんで時計?』と思われるかもしれないけど、僕からしたら得意なマーケットの1つだったんです」
とはいえ、ユーザーの1人と、経営者としてでは話が違う。ただ、それも強みになると大津は言う。
セミプロの重要性と顧客の満足度
「ビジネスを作っていくうえでセミプロは大切な存在だと思うんです。僕は時計に関してはセミプロですが、セミプロって凄いんですよ。知識がある上で、こういうところを変えたらいいんじゃないかということに気づける。プロは知識があっても気づけないんです」
コミットにおいて大津はまさにセミプロだった。プロの意見をくみ取りながら、エンドユーザーの気持ちに寄り添うことで、サービスはより良いものになる。
ただ、セミプロもいつかはプロになる。だからこそ大津はエンドユーザーの声に耳を傾ける。そして、エンドユーザーの満足は、大津が大事にする考えの1つ、継続性につながる。
「僕たちがやりたいことだけをやっていたら継続性は生まれない。継続性がなかったら頑張っても売上は上がらないです。お客様が満足しないと、取引は単発で終わってしまいます。1年だけ売上が上がることはあっても、長期的に見るとうまくいかない」
学びを通じてセミプロになり、エンドユーザーの満足度を上げるために改善する。そして、それを続けていくことで売り上げを上げていく。
学び、行動し、継続する。大津が大切にする3つの行動はビジネスの世界で活かされている。
その根本には、大津のこんな価値観がある。
「お金を稼いで幸せを1人で取ってしまう人が世の中に多いなと思うんです。僕はそうは考えられない。全員が幸せになるように、人を大事にしていくというのが僕の根本にある。このスタンスさえずっと変えなければ、永続的に勝てるだろうなと思っています」
なぜ大津祐樹はビジネスに本気で取り組むのか?
これだけ具体的に、そして構造的にビジネスの話をしていると、元サッカー選手と話しているということを忘れてしまいそうになる。ここまでの話を聞いて、大津が単なる知名度に頼った経営者ではないことが分かっただろう。
ところで、なぜそこまで大津はビジネスに対して本気で取り組むのか。
「ビジネスで活躍する姿が見えないと、お父さんお母さんがサッカーを辞めさせる可能性がある。でも、スポーツって個人で技術を学ぶことも、チームで勝ちにいくところも、学べるものがたくさんある。そのきっかけを摘んじゃうのは納得できないんです」
もちろん、サッカーをやっているうちは選手として活躍することを目標とすべきだが、大津がビジネス界で活躍し、それを世の中に伝えていくことが、スポーツ、サッカーの価値を高めることにつながる。
「サッカーやスポーツから学んだことは多いんで、恩返ししたいんです。そこに強い思いがあるからやり続けられる」
今後のキャリアを尋ねると、大津は少し笑いながらこう答えた。
「今のところ本当に分かんないです。次に何やってるのか、明確には分かんない」
しかし、「どうなりたいか」ははっきりある。
「薄っすらありますよ。僕の中の目標と、達成したいなっていう目標はあって、自分の中で決めてます。別に公言はしないですけどね」
これまでのキャリアはいつも「人との縁」から生まれてきた。おそらくこれからもそうなるだろう。
「誤解している人が半分いたとしても、10%でも知ってくれる人がいたら嬉しいですね」
微笑みながらそう話す大津のキャリアは、多くの学びと行動の継続が結集した結果として紡がれたものだと分かった。
「実際に会って話をしてもらった方には分かってもらえる」
冒頭でそう言っていたことを思い出す。実際に会って話を聞くと、大津が経営者として着実に実績を積み上げていることが分かった。
プロサッカー選手を引退した今、大津はビジネス界のメッシやロナウドを目指して、挑戦を続けている。
(取材・文:加藤健一)
著者プロフィール:加藤健一
1993年生まれ、東京都出身。『フットボール批評』、『ジュニアサッカーを応援しよう!』(ともにカンゼン刊)の編集を経て、フットボールチャンネル編集部に。『育成主義』(曺貴裁著)、『素直 石川直宏』(馬場康平著)などの書籍編集を担当。箸とペンは左利きだが、スポーツはだいたい右利き。2022年1月から約2年はフットボールチャンネル編集長を務め、現在はJリーグやサッカー日本代表を取材。Twitter:@katoken97
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