
アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ【写真:Getty Images】
目下開催中のFIFAワールドカップ北中米大会(北中米W杯)では、各国のエースが大活躍中だ。組織的なプレーが重視される現代サッカーにおいて、今大会では個人が輝きを放っている。しかしFIFAの公式データを紐解くと、各エースの使い方には「省エネで爆発力を温存する型」と「自ら走り抜きチームを牽引する型」という、対照的な“ヒーローの輝かせ方”が浮かび上がってくる。
それぞれの「エースの形」
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北中米W杯で得点ランキング上位に並ぶリオネル・メッシ、キリアン・エムバペ、アーリング・ハーランド、ハリー・ケインらの走行距離データを見ると、今大会における「エースの使い方」には大きく2つの型があることが分かる。
ターンオーバーを選択するチームもあり、総走行距離の全体ランキングにはあまり意味がないが、チーム内の関係を相対的に映し出すことはできるだろう。
そこから分かることのひとつ目は”省エネ型”だ。ハーランドの総走行距離は29,515mで、平均速度4.29km/h、スプリント112回とチーム内でも低水準にとどまる。司令塔マルティン・ウーデゴール(34,880m)より5,000m以上少ない。
メッシも27,595m、平均速度4.56km/h、スプリント96回とアレクシス・マック・アリスター(39,278m)より1万m以上少なく、距離だけでなく強度そのものを抑えている。
総プレータイムがメッシより短いラウタロ・マルティネスやチアゴ・アルマダらと比べてもスプリント回数が少ないことから、いかに周りの選手がサポートに走り回っているのかが窺える。
中盤のハードワーカーが走ってボールを運び、エースは決定的な場面のためだけに脚を温存する。いわば、チームがエースのために走る構造だ。
もうひとつは”フル稼働型”。ケインの総走行距離は43,444mで、イングランド代表の中で最長。平均速度6.63km/h、スプリント168回もジュード・ベリンガム、エリオット・アンダーソンらに次ぐチーム最高水準だ。文字通り最も走り、最もスプリントするエースである。
エムバペも総距離42,709mとチーム上位に入るが、平均速度5.33km/h、スプリントは160回とやや中位にとどまる。ジュール・クンデやミカエル・オリーズほどの高強度運動はなく、”走行距離は稼ぐが強度は抑える”ハイブリッド型といえる。平均速度もウスマン・デンベレの方が上だ。
こうして見ると、エースの能力を最大化する方法は決して一様ではない。省エネで爆発力を残すか、自ら走って基準を引き上げるか。走行距離データという一見無機質な数字の中に、各チームが積み上げてきたゲームモデルや、エースへの信頼の形が、くっきりと表れているのだ。
属人性の高すぎる戦い方はチームとして懸念されるが、かと言ってフランスのようにエースの前後左右にバロンドール級を集めるのもいばらの道だ。いずれにしても、トップ・オブ・トップを目指すためには“個人”のレベルを高めることは必須条件と言えそうだ。
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