岡田武史の挑戦 日本人監督の可能性とは?【サッカー批評 issue58】

2012年12月11日(Tue)23時33分配信

text by 二宮寿朗 photo Kazuhito Yamada
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岡田武史を読み解くポイント 3.ロマンとチャレンジ精神

 決断力、状況把握力があっても、チームを動かす力がなければどうしようもない。

 岡田は自分が与えられた舞台でロマンを持ち、それに向けて己のチャレンジ精神をぶつけることで選手たちの心を揺さぶってきた。

 代表監督に2度目の就任となった際、妻に猛反対されたという。それでも彼は二つ返事で受諾した。「横を見たら断崖絶壁の山があって、ここはチャレンジしなきゃいけないと思った」

 W杯ベスト4進出というロマンを抱き、自らが本気になって取り組むことで選手たちの意識を変えていった。選手を本気にさせたことがベスト16への原動力となった。

 過去、岡田が惹かれたチームに、2002年日韓W杯ベスト16のアイルランド代表がある。全員が激しくファイトし、一致団結してアグレッシブに戦う魂のサッカーは彼の目にまばゆく映った。

 戦術ばかりに走りがちな今の流れを、彼は問い直していたのかもしれない。

中国での苦境が、指導者としての幅を広げる

 大会後にこう語っている。

「欧米流のスポーツの概念が入ってきて日本に“道”の概念が希薄になった。“道”なんて古いんだと、日本人自ら一番の強みを消していたように思う。南アフリカW杯に向けてチームを立ち上げたときに日本には武士道があって、強いメンタリティーがあるんじゃないのか、って僕はみんなに問いかけた。フィジカルもテクニックもそう。勝てない、できないと頭で勝手に決め付けていただけ」

 そして岡田はよく言ったものだ。「勝ちたいという気持ちの前では、戦術なんて屁のツッパリにもならん」――。

 勝利のためにひとつになって泥臭くともゴールを目指そうとした南アフリカでのマインドは、岡田の理想としたところだったのではあるまいか。

 かくして岡田武史は日本人指導者の先駆者的な存在として海外のプロリーグに向かった。中国の数クラブからオファーがあるなかで、トップチームの戦力よりも、育成の環境を重視して杭州緑城を選んだ。中国には戦争によって根強い反日感情もあれば、文化や思想の違いも大きい。それでも中国に渡ったのはロマンとチャレンジがあるからに他ならない。

「スーパーリーグで優勝してACLに出て、クラブW杯でバルセロナとやりたい」

 ロマンとチャレンジがあるから、苦しみにも耐えられる。逆襲のパワーとして引き出せる。

 決断力、状況把握力、そして自らのロマンとチャレンジ精神――。中国で味わっている苦境が、岡田の指導者としての幅を広げていることは間違いない。

初出:サッカー批評 issue58

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