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ファビオ・カペッロ「英国のフットボールはもはや、発祥地のそれにあらず」(後編)

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Kazuhito Yamada

最も守備の堅いクラブがリーグを制する

――昨シーズンは、マンチェスターCが優勝。プレミアで勝ち上がるために、選手の質はもちろんですが、他に必要になってくるところとは?

「『最も守備の堅いクラブがリーグを制する』。事実、シティの総失点はリーグ最少だったはず。と同時に、彼らは確か総得点でもリーグ1位の数字を記録しているはずだ。もちろん、あのクラブが潤沢な資金力をもって超一流を掻き集めたのは事実としても、だからこそその集団をまとめあげるのは困難を極める。ロベルト(・マンチーニ)は、実に見事な采配でシティを優勝に導いてみせた。

 ただし、あれだけのメンバーを揃えておきながら昨季のCLではグループリーグで敗退。この結果はやはり看過できない。あれだけのチームである以上、欧州8強入りは最低限の義務だ。ここをどう改めてくるか、いかなる戦い方をCLで見せるのか、来季、ロベルトの手腕に注目したい」

――来季もリーグ上位であろうマンチェスター・U、チェルシー、アーセナルといった、優勝戦線に絡むそれぞれクラブにどのような戦術的特徴があると見ているのしょうか。

「すべてを語れば長くなってしまう(笑)。ここではマンUとチェルシーに絞ることにしよう。

 というわけで、まずはマンUについて語るとすれば……、もうこのクラブについては万人の知るところであり、今にして私が詳細を述べる必要はないのだろう。ただ、ひと言だけ言っておくとすれば、それは『仮に要の選手が抜けてもパフォーマンスを落とさない』。これがファーガソン率いるチームの最も特筆すべき特徴ではないのか。どれだけ演者たちが変わろうと、観衆が目にするスペクタクルに変化はない。

 一方のチェルシーに関しては、触れるべきはやはり昨季のCL制覇。これはもう一人のロベルト(・ディ・マッテオ)の徹底した現実主義。実に冷静な判断で戦術を大幅に変えたゆえの結果だ。チームの重心を極端に下げ、どんなに消極的と非難されようが意に介さず、前任者ビラス・ボアスには干されていたドログバに攻撃を委ねた。この実にシンプルな策が選手たちから迷いを消した。

 とはいえ、このチームが来季以降も長く勝ち続けるようなことはないだろう。大掛かりな“プロジェクトの変更”を要している。

 だがやはり、昨季のCL制覇には素直に称賛を送りたい。ここ数年にわたり大枚を叩いては“有数のビッグクラブ”たろうとするチェルシーは、なかなか勝てずにいた。ところが、ここ数年で最も相対的には戦力を落としたチームが欧州を制してみせた。サッカーとは実に不思議なものだ。しかし、だからこそ面白いと言うべきだろう」

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