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マラガが告げるリーガ2強時代の終焉!?(後編)

text by カルロス・カリーニョ photo by Kaz Photography

中・長期を見据えた強固な地盤作り

 実際、2014年のブラジルワールドカップに向けた欧州予選での出番は間近と見られており、現在マラガでスポーツ・ディレクターを務め、マラガに来る前までデル・ボスケ監督の下、スペインサッカー協会でスカウトとして働いていたアントニオ・フェルナンデスは「イスコはスペインサッカー界のみならず、世界のサッカー史に名を刻めるだけのタレントを持っている」とその才能を高く評価している。まだリーガ1部でコンスタントな活躍を見せていなかったイスコに700万ユーロもの移籍金を払う賭けに出たのもフェルナンデスの才能の見極めが大きい。

 スポーツ面では未だ地元サポーターを満足させるだけの結果を残していないマラガではあるが、チームへの期待感はシーズン開幕当初と変わっていない。今季のマラガは2万6500人もの年間シート購入者を持っており、年間シート購入待ちリストにも大勢のサポーターが控えている。

 開幕前に年間シートが売り出された時のチケットオフィスでの熱気、フィーバーぶりはまだ記憶に新しい。「年間シート狂想曲」とも呼べる状態にクラブの役員を務めるホセ・カルロス・ペレスは「これ以上、年間シートに割くことのできる席はありません」とサポーターに謝罪したほどだ。

 UEFAのリポートによれば、スペインにおいてスタジアムの集客率というのは90%から70%に下落しており、ドイツ、イングランド、フランスの下になる。しかしながら、マラガはスペインの傾向とは真逆の現象にある。ラ・ロサレダは大半が年間シートのサポーターで埋め尽くされ、対戦相手によっては超満員、平均しても空席がほとんど目立たない状況になっている。

 アル・タニが唯一スペインメディアの取材に応じたのが2010年12月10日の『アス』である。そのインタビューにおいてアル・タニは、

「6万5000人規模のスタジアムを作りたい。完成した時にそのスタジアムの名前は『カタール・スタジアム』とするだろう」
「スペインとカタールの両国の良好な関係を構築したいし、私がマラガのオーナーになることでその橋渡し役を担いたい」
「予算的な面で言うと、このプロジェクトにおける制限は設けていない。マラガをいつかチャンピオンズリーグで戦えるチームにする」
「ペジェグリーニは偉大な監督であり、クラブのフィロソフィーに適応する人物だ」
「サポーターというのは、プロジェクトにおいて欠かせないパーツの一つである」
「私は決してマラガを見捨てるようなことはしない。私の心、愛は常にマラガと共にあり続ける」

といった印象的なフレーズを残している。マラガのプロジェクトというのは始まったばかりであるが、短期的、投機的なものではなく、中長期的なものであり、そのための人的、環境的な整備も整い始めている。

【了】

初出:欧州サッカー批評5

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