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日本人がカンプ・ノウでプレーする日(前編)

text by 北健一郎 photo by Kazuhito Yamada

ゴールを量産する建英君 それ以上に浜田氏の印象に残ったこととは

 サッカーキャンプに参加したのは建英君が小2のときのこと。1年前のサッカーキャンプを建史さんは見学に行き、そこでやっていた練習メニューを2人で実践した。元々、技術的には高いものがあった建英君だが、バルサ好みの選手になる努力をしていなければ、MVPになれたかどうかはわからない。しっかりと計画的に準備を行ってきたことが、300人の中から選ばれた大きな要因だろう。

 2010年4月、MVPになった建英君はバルサスクール選抜に入って、ベルギーで行われた8人制サッカー大会に出場。この大会では、バルサスクールの選手たちに交じってプレーし、強豪クラブの中でチームを3位に導いた。大会終了後にはうれしいサプライズが待っていた。通常は優勝チームから選ばれるMVPに選ばれたのだ。

 8歳以下の大会とはいえ、国際大会で日本人がMVPに選ばれたことは快挙と言っていい。建英君はドリブルで相手をほんろうしながら、左足から繰り出すシュートでゴールネットを何本も揺らした。だが、浜田氏にはそれ以上に印象的なシーンがあるという。

「相手にすごい押し込まれた試合があり、建英君はCF(センターフォワード)で出場していました。スペインではCFは攻撃の深さを作る役割があるので、コーチから『最終ラインと同じ高さに残っていろ』と指示が出ていました。それなのに、建英君は結構下がってきたんですね。試合が終わってから『コーチは下がるなって言っていたのに、どうしてやらなかったの?』と聞いたんです。

 そうしたら建英君は、『コーチが言っていることはわかっていたけど、僕たちの年代のキック力だと、高い位置にいてもボールが届かない。だから下がったんだ』と言ったんです。それが正しいか正しくないかはさておき、コーチが言ったことを咀嚼したうえで、自分の中で答えを出してプレーしていることに驚きました。大人になってもできない選手はできないですからね。ましてや、8歳でできる選手はほとんどいないと思いますよ」

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