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欧州5大リーグで成功するために必要なこと~イングランド・プレミアリーグ編~

『現地記者が分析する欧州リーグにおける日本人選手の適応条件』
今では多くの日本人選手が海を渡り、海外リーグへ挑戦するようになった。日本とは違う環境で成功するためには一体どんなことが必要なのだろうか? 欧州各国に滞在する現地記者が、欧州リーグで活躍するための適応条件を探った。今回はイングランド・プレミアリーグ編をお届けする。

text by 藤井重隆 By Shigetaka Fujii photo by Kazuhito Yamada


4人の日本人選手が活躍する、イングランドプレミアリーグ(写真は宮市亮)【写真:山田一仁】

過去所属選手:西澤明訓【2001/ボルトン(セレッソ大阪からの期限付き)】、稲本潤一【01-02/アーセナル(ガンバ大阪からの期限付き)、02-04/フルハム(ガンバ大阪からの期限付き)、04/WBA】、川口能活【01-04/ポーツマス】、戸田和幸【03/トッテナム(清水エスパルスからの期限付き)】、中田英寿【05-06/ボルトン(フィオレンティーナからの期限付き)】

現在所属選手:宮市亮【12/ボルトン(アーセナルからの期限付き)、12-現在/ウィガン(アーセナルからの期限付き)】、李忠成【12-現在/サウサンプトン】、香川真司【12-現在/マンチェスター・ユナイテッド】、吉田麻也【12-現在/サウサンプトン】

プレミアリーグ(イングランド)

労働条件:過去2年間、出身国の代表に選出され、国際Aマッチ(親善試合、強化試合は含まず)に最低75%以上出場。また、過去2年間、出身国がFIFA世界ランキングで平均して70位以上であること。

 例外として、過去2年間で該当選手が負傷または出場停止となっていた場合、その期間は対象外となる(ただし、負傷中にもかかわらずベンチ入りした場合は対象外とはならない)。選手が条件を満たさなかった場合でも、クラブ側が選手の技術力や経験値の高さ、有望な将来性を示す証拠を提出すれば、審査官が特例として就労を許可する場合も。

 選手の就労ビザは選手の契約期間の年数分、最大で5年分発行され、選手が期限付き移籍する場合は、移籍先のクラブが新たに選手のビザに修正を加える必要がある。一度申請を拒否された選手は、翌シーズンまで再申請できない。

外国人枠:外国人枠はないが、トップチームに登録できる人数は25名までで、自クラブ出身選手を8名含め、移籍市場の期限日までに登録しなくてはならない。また、自クラブ出身選手とは、21歳の誕生日までに3シーズン以上、同クラブでプレーした選手が対象となる。同ルールはプレミアリーグのみを対象とし、欧州戦、カップ戦は含まれない。言葉:英語でのコミュニケーションが必須。監督や選手によって強い訛りがあるため、選手によっては順応に時間がかかる場合もある。

人種差別:人種差別で昨季問題になったのが、チェルシーのDFジョン・テリーとリバプールのFWルイス・スアレスが、黒人選手(QPRのDFアントン・ファーディナンドとマンUのDFパトリス・エブラ)を侮蔑した件で、両選手とも出場停止を科されたほか、テリーに至っては裁判で無罪になったものの、FAから罰金と出場停止処分を科され、イングランド代表引退にまで追いやられた。

 日本人選手は東アジア市場の商業目的という目で見られがちであり、シャツの売り上げを伸ばすため、ファン拡大のための駒としてメディアに取り上げられる。現在、日本人選手が所属するクラブでは人種差別的なことはないが、例としてマンUの香川が宿敵であるリバプールファンに大衆紙のゴシップネタで野次られたりもする。

言葉に慣れ、意思の疎通を図らなければならない

 チーム適応に最も必要なことは監督・選手との意思の疎通であり、現地の言葉に慣れ、チームのニーズにいち早く応え、監督に気に入られることだ。いかにチーム戦術を吸収し、味方の動きを理解するとともに、自分の動きを味方に分からせられるかがカギとなる。英メディアの「東アジア人選手=商業目的」というイメージを払拭するためにも、ピッチ上で実力を示し、結果を出すことが求められる。

 日本人選手がプレミアリーグの試合に出場して必ず口にすることとして、技術面で最も基礎的な部分である身体面の強化(相手の激しい接触プレーに順応できるか)、そうしたプレスの中でのファーストタッチ、パスの正確性などが挙げられる(香川、宮市、李、稲本談)。

 試合でマンオブザマッチに輝いた選手や会見に臨む選手が、インタビューでどれだけの英語を話せるか、という面でも現地メディアでは選手の順応を示す物差しになる

【了】

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