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編集日記 11年前

なぜJクラブの社長はいつも悪者にされるのか?

なぜJクラブの社長はいつも悪者にされるのか? そんな素朴な疑問が本日発売の『サッカー批評issue60』(双葉社)の特集「Jクラブ社長の教科書」の着火点となっています。

text by 森哲也

今の日本にどれだけスポーツクラブ経営に長けた人材がいるのか

 本日は『サッカー批評issue60』(双葉社)が発売になりました。特集は「Jクラブ社長の教科書」と題して、20年目を迎えたJリーグ社長の実態を解き明かしていきます。

 というのも、我々は意外に社長がどんな仕事をしているのか? どんな現実に直面して、どんなことを求められているのか? あるいは、社長を取り巻く環境はどうなっているのか? 案外、知らないことが多い。にもかかわらず、つい「あの社長はダメだ」などと失格の烙印を押してしまいがちです。当たり前ですが、多くの人は社長の目線で物事を見ていないし、見ること自体簡単ではない。そういうモヤモヤしたものを晴らして、まずは社長の実像を知ろう、というのが本特集の第一の目的です。

「社長失格」という表紙のタイトルから、社長を糾弾しているような印象を持たれるかもしれませんが、何でもかんでもそういう風潮になりがちな現状をどうすれば変えていけるのか、という思いを込めて特集を組んでいます。

 とはいえ、トップの責任は重大です。万が一、トップが腐っていたら、あっという間に組織は腐敗していくものだと思います。例えばあの……(やめておきます)。

 ただし、よく考えなければいけないのは、現実問題として、いまの日本でどれだけスポーツクラブの経営に長けた人材がいるのか、ということです。つまりプロクラブ経営の「経験値」がまだまだ不足しているのが、いまのサッカー界の現状であり、他業界の優秀な経営者がどんどんサッカークラブの経営に携わりたい、となっているかというと、まだそこまで魅力的なリーグにはなっていない。

 プロ化して20年のJリーグがさらに発展するためには、経営者、GM的人材の不足感をどう解消していくかはとても重要な問題だと思います。

良くない状況のときこそ、トップの資質は問われる

 今回、いくつかのクラブの社長にインタビューをお願いしましたが、残念ながらスケジュールやタイミングの問題等で実現しなかったものがあります。我々の熱意が足りなかった部分も大きいですが、サッカークラブの社長にはもっと表に出てメッセージを発信するスタンスでいて欲しいと思います。

 いいときもあれば、悪いときもある。決して良くない状況のときこそトップの資質は問われるのだと思います。

 そういう意味では、忙しいなか今号で取材を受けていただいた方々には本当に感謝しています。なかでも多額の累積損失を公表した横浜F・マリノスの嘉悦社長、惜しくもJ1昇格を果たせなかったジェフ千葉の島田社長には堂々と取材を受けていただけた。実際、嘉悦社長のインタビューに同席しましたが、表情からは「逃げも隠れもしませんよ」と言わんばかりの強い決意と自信が感じられました。

 そういった情報発信に積極的な姿勢は今後のJクラブのひとつの指針になるはずです。もちろん、それをやっているから万事うまくいく、というほど単純なものではないと思いますが、そうした姿勢はクラブの風通しを良くし、サポーターとの良好な関係を作るためには必須の条件になるのではないでしょうか。

 でも、言うは易く行うは難し。読者の皆様には、今号の特集を通して改めて社長の一端を知っていただいて、そのうえでどんどん厳しく、本質的な議論につながればと思います。やっぱりサッカークラブの社長というのは、どんなに大変でもそれだけ価値のある、尊い職業だと思うので。

【了】

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