サッカーを遊ぶ南米、サッカーを遊ばない日本(後編)

2013年01月13日(日)11時15分配信

text by 植田路生 photo Kenzaburo Matsuoka
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もっとスポーツ全体を楽しんで欲しい

「それ、クリエイティブというよりも、とっさのものじゃないかな。出るんです。引き出しがいっぱいあるから。ジーコのサソリキックを見たある日本人が、『マリーニョさん、あれ練習しているんですか?』って。練習するわけがない(笑)。絶対にしないもん。

 09年のクラブW杯で、メッシが胸でゴール決めたじゃない。練習したことないと思うんですよ、あれは。あれが一番簡単だなと。うまい選手ってのはまず、味方を見てこのボールなら相手も取れないし、味方が取りやすいな、と想像する。その次に、実現できるかどうかの問題だよね。考える人はいっぱいいますよ。だからうまい人ってのはまず考える。で、実現できる」

「想像までできる人はすごくいますよね」

「想像力持っている人は多いかもしれない。実現できるかどうかの問題だからね。見えるのは見える。いろんなものが見える。もちろん見えない人もいっぱいいる。見えたらそれを実現できるかどうか。そういうことができるかどうか。フリーキックがそう。壁があってボールが止まっている。弧を描いて入れるイメージは誰でもできるの。だけど、蹴ってできるかどうかは別の問題」

「南米のようにクリエイティブな選手を多く生むには、フットサルをやったり、小さいときから狭いスペースでのプレイ経験も必要です。テベスなんかも4人制のサッカーをやっていましたし。で、見ている数も違うし、大人ともいっぱいしゃべっていて、考える力もあります。今でも南米には、表現できる人がいっぱい出てきてくれている。だからヨーロッパへもどんどん重宝がられて買われていくんじゃないですか」

――まずは、想像できる人がたくさんいるような環境になることが大事なんですね。では、最後に何かあれば。

「僕は全体的にはもっと日本人がスポーツ全体を楽しんでほしい。本当に遊びだよ、と。競技だけじゃない。まず遊び。苦しいことをするんじゃなくて。選手になろうとする人は苦しい道を歩まなきゃならない。そうじゃない人は別、となってほしい。全体のスポーツに言えることだけど、特にサッカーの場合は苦しいスポーツになってほしくないね。楽しい、いいスポーツだなあとなれば最高だな」

「勝ち負けも大事だし、スピードだったりというのがあるとは思うんですけど、石塚啓次や小野、遠藤(保仁)、香川など面白い日本人は確実に出ているので。そこを見ている人も面白いと、それを出し合うようになってほしい。

 マリーニョさんが言っているように10人も20人もそういう選手がいるリーグになって、国内もみんな足を運んで、見に行きたいなというような国になるような環境にしてもらいたいな、ってのはありますね。僕もがんばりますし。それをやっぱり目標にどんどん選手も、若い子も育ってくれると思うので、そうなって一歩でも世界に近づいてくれればいいなと思います」

【了】

初出:サッカー批評issue54

プロフィール

アデマール・ペレイラ・マリーニョ
1954年、ブラジル生まれ。サッカー指導者・解説者。1975年、札幌大学の留学生として来日。その後、フジタ工業(現・湘南ベルマーレ)に加入し、日本リーグで通算50 得点をあげる。フットサル日本代表の監督を務めたことも。

亘崇詞
1972年、岡山県出身。サッカー指導者・解説者。1991年、単身アルゼンチンに渡り、ボカ・ジュニアーズとプロ契約を結ぶ。高原直泰がボカに加入した際には通訳となる。現在は東京ヴェルディのジュニアユース監督を務める。

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