検証・移籍ルール変更後のJリーグ ~Jクラブは直面する現実にどう対処すべきか?~(前編)

2013年01月16日(水)10時00分配信

text by 小澤一郎 photo Kenzaburo Matsuoka
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甲府の佐久間GMが分析するFIFAルールへの移行

 甲府の佐久間氏も大宮の強化部長時代、元セレソンのクリスティアンがシーズン中に突如移籍を希望したことで、世界的にも「やり手クラブ」と称されるサンパウロ相手にハードな交渉を経験している。

「俺は知事よりも力がある」というサンパウロ会長の脅しや交渉の席で出てきた国際法令、ファイナンスのスペシャリストを相手に一歩も引くことなく6000万円近い移籍金を得ることに成功。優秀な交渉人としての能力も持つ佐久間氏は、FIFAルールへの移行をこう分析する。

「国として、協会としての明確なビジョンがあるオランダでさえ、今衰退しています。いろいろな問題がありますが、一つはボスマン判決以降の移籍制度。欧州で今何が起こっているかというと、なかなか潤沢な移籍金を得られないので、育成のところに再投資できないという負のスパイラルに陥っている。その観点で考えると、国際移籍をすることについてはFIFAの基準でいいけれど、国内移籍は別に今まで日本のローカルルールはあっても良かったわけです。それも一気に撤廃してしまった。

 大きい問題はなかったように見えますけど、実はこの1年でクラブ間の格差がより大きく浮き彫りになった。もう一つは、選手のクラブに対する帰属意識、ロイヤリティが希薄になっていく恐れを感じています。今のままだと、恐らくJリーグは疲弊していって、見に来る人たちも選手の名前と顔が一致しない。

 毎年新しい選手が来て、地域に根付かない。そういうチームが地元から育成すればいいんだと言っても育成するすべもない。そうなるとJリーグの存在意義自体が問われることになる気がしますので、何か救済措置のようなものをもう一度設計するか、新しい制度を構築する必要があるんじゃないかと考えています」

強権的な欧州のクラブ ドライになれないJクラブ

 一方、選手エージェントの田邊伸明氏は、マルセイユに移籍した中田浩二の実例を用いて「このルールは、選手側だけに良いことがあるというわけではない。選手にとってのリスクも生まれる」と指摘する。

「中田がマルセイユに移籍した後、どういうことが起きたかというと、(中田を呼び寄せた)フィリップ・トルシエがいなくなって、中田にイスラエルのクラブから億単位のオファーが届いた。でも、彼は『行かない』と断った。そうしたら、トップチームを追い出されて、ユースのロッカーに行かされて、朝9時と夜6時にトレーナーと2人だけでずっと走るだけの練習をやらされた。2006年1月だったから、マルセイユの強化部長に『このままじゃコンディションも落ちて、気も狂って、ドイツのワールドカップにも出られなくなるぞ。それでもいいのか』と言われました」

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