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香川真司 11年前

先制点の起点になった香川真司。トップ下で見せた大きな役割とは?

text by 北健一郎 photo by Kazuhito Yamada

先制点を生み出した香川の展開力

 25分の先制ゴールは、香川がファーガソン監督に求められている仕事をしっかりと果たした、象徴的なシーンだった。

 ジョーンズがDFを背負った香川に縦パスを入れる。香川がワンタッチで落としたボールをキャリックが左サイドに展開し、そこからウェルベック→クレバリーとつながり、最後はクロスをファン・ペルシーが頭で叩き込んだ。

 日本のスポーツニュースは、日本人選手が得点に絡むとよく「○○選手が起点になってゴールが生まれた」といった形で報じる。とはいえ、実際のシーンを見てみれば、何でもないパスを出していただけで、とても起点になっていたと言えない場合も多い。

 しかし、香川のプレーは紛れもなく“起点”となったものだった。縦パスを受けるとき、香川の周りには3人のDFがいた。3人の三角形の中心地点で香川がパスを受けることで、密集地帯が生まれ他のスペースが空く。香川は味方と相手の位置、スペースがどこあるかを冷静に見極め、ワンタッチで正確なパスを送って、キャリックにサイドチェンジをうながした。

 現状、ゴールに直接的につながりそうな場面で、香川はなかなかボールをもらえない。もちろん、そういったパスが回ってくるには、香川自身が今以上にチームメートの関係を構築する必要があるし、ゴールという目に見える結果を出す必要もあるだろう。

 とはいえ、香川が味方に信頼されていないのかといえば、そうでもなさそうだ。得点シーンのように香川が中盤で相手ディフェンスの間に入ったときは、周りに相手がいてもパスをもらえる場面は明らかに増えた。「香川にパスを出せば良い形で展開してくれる」というイメージは、ゆっくりとではあるがチーム内に浸透されつつある。

 マンチェスター・Uにおける香川のポジションは自分の力で試合を決める主役ではない。ドルトムント時代のイメージで見ている人にとっては物足りなく映るかもしれない。それでも、この試合で香川が見せた「アシストのアシストのアシスト」は、現状の香川にとって大きな価値のあるプレーだった。

【了】

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