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Jリーグ 11年前

ゼロックス杯の結果を分けた、広島と柏の仕上がりの差

text by 編集部 photo by Kazuhito Yamada, Kenzaburo Matsuoka

安定感を感じさせた広島のプレー

 広島は本来、マイボール時に特殊な選手の配置を行うことによって、4バックの相手に対してフリーの選手を多く作り出すスタイルを採っているが、この試合では柏が3バックを採用してきたことで、ピッチ上では様々な局面でマッチアップする機会が増えた。今季はJリーグ全体としても3バックを採用するチームが増えてくると予想され、広島対策として3バックを導入するチームもあるだろう。

 対戦相手が3バックでスタートしマッチアップが増えると、システム上での広島の優位性は減退する。しかしそんな中でも、広島が優位に試合を運ぶことができたのは、青山の優れた判断力、技術力に拠るところが大きい。柏の栗澤僚一もこう述べている。

「(基本は青山が引いてもボランチが付いて行く?)ボランチ一人が付くってことなんですけど、一人出てしまうと、出たスペースを上手く使われてしまう。ただ行かないと青山のところで持たれてしまう。
(それは決め事? 選手の判断?)もちろんそこは広島のストロングポイントなんで、ボランチが一人付くという決まり事でした。ただそうするとあっちのシャドーがボールを受けやすくなってしまう。そこで起点を作られて、またボールを追って、になってしまった。そこは上手くいかなかった」

 栗澤のコメントを読み取ると、青山は一人で柏のボランチ二人をコントロールしていたことになる。バルセロナがウイングを両翼の高い位置に配置し、二人で相手のディフェンスライン四人をコントロールしているのはよく知られていることだが、ポジションは違えども、青山が一人で広島の数的優位を作り出していた、と言えるだろう。

 試合全体を通してみても、広島の安定感は際立っていた。例えば中盤でボールを奪われた際に、すぐにリトリートするのではなく、中盤で一度強く圧力を掛けてボールを下げさせる守り方などは、昨年から森保監督が採り入れたパターンの一つだが、その切り替え、判断にも迷いがない。

 終盤には柏の猛攻に押し込まれる場面もあったが、そこでも闇雲にボールを繋ごうとするのではなく、時間帯を考えたプレーを選択できていた。このあたり、昨年リーグを制したことが、チームに落ち着きと冷静さをもたらしていると言えるのではないだろうか。

 また、移籍した森脇の穴をどう埋めるのか、というのも今季の広島にとって重要な課題となっていたが、昨年夏に水戸から加入した塩谷が一定のパフォーマンスを見せ、目途は立ったと言えるだろう。もともと塩谷は水戸時代に4バックのセンターバックとして高いスキルを見せていたが、広島のような3バックは初めての挑戦となる。

 塩谷は森脇のような攻撃特性を持った選手ではないものの、対人の強さ、高さは折り紙付きであり、フィード力にも定評がある。塩谷が広島のスタイルにフィットすれば大きな戦力であることは間違いなく、その力をこの試合でしっかりと証明した。ACLの舞台では対戦相手が執拗にロングボールを放り込んでくることも考えられるだけに、塩谷がディフェンスラインに入ることで、高さ対策という面では昨年よりも質が高まった、といえるかもしれない。

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