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スペインの指導現場で体罰がないワケ

text by 編集部 photo by Kazuhito Yamada

ビルバオの激しさとは何か?

西部 現地に行ってる間、紅白戦を2回ほど見た。あの感じでずっと相手をつけてトレーニングしてたら怪我しちゃうんじゃないかと思った。だから、付けないのかもしれない。

 面白かったのは紅白戦で、試合に出るチームとリザーブチームがやるとき、リザーブチームはちゃんとすね当てをつけてやっているんだけど、レギュラーチームは誰一人すね当てをしていない。というか、ショートソックス履いてるから、入れられない(笑)。

 しかも、ビルバオの紅白戦でビエルサがフィールドの真ん中に立っているんだけど、笛を持ってないんです。ファウルを取らないで、全部流す。よっぽどひどい時は、ファウルした選手が相手にボールを与えちゃうんですよ。

――「試合中もファウル覚悟で激しくいけ」っていうメッセージなんですか?

西部 それか「ファウルをするなよ」っていうメッセージなのかわからないけど、実際に紅白戦はすごく激しい。レギュラー組が足を蹴られて3人ぐらいリタイアしてたり、だったらシンガード付けなよと、見ていて思った(笑)。その辺がすごく馬鹿馬鹿しい感じなんだけど、かなり激しいですよ。

清水 そういう練習を普段からやってるから、ぎりぎりで、怪我する前に避けるみたいな感覚も研ぎ澄まされていきますし。例えば、スナイデルはオランダ人の中でもすごく小さい選手。だけど、当たり負けしない。そういう中でプレーするのに慣れているから、ギリギリで相手の力を受け止めるような方法とか、自然と身につけないと生き残れない。だから、競争の中で身についていくのかなと。

【了】

プロフィール

西部謙司(にしべ・けんじ)
1962年生まれ、東京都出身。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。近著に『FCバルセロナ』(ちくま新書)などがある。

清水英斗(しみず・ひでと)
1979年生まれ、岐阜県出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。主な著書に『サッカー「観戦力」が高まる』(東邦出版)がある。

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