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スペインの指導現場で体罰がないワケ

昨年10月にビルバオでの現地取材をしてきた2人のジャーナリストが語り尽くした対談から、誌面に掲載できなかったこぼれ話を紹介。スペインと日本を比較して、体罰問題に言及していきます。
構成:澤山大輔 進行:植田路生

text by 編集部 photo by Kazuhito Yamada

スペインの指導現場で体罰がないワケ

清水 ビルバオの練習をユースまで見ていたんですけど、こんなに強度と集中力の高い練習はなかなか見られないですね。今まで見た中でもトップレベルに入るくらいの集中力と強度を感じました。

 1時間半しかやらないんですけど、その中の密度がめちゃくちゃ濃い。本当にガンッと集中して、さあ終わり! みたいな。あのレベルの強度と集中力でやっていたら1時間半以上できない、っていうのはすごく納得できる練習でした。

西部 これはトレーニングの目的にもよると思うんだけど。特にユースの選手なんかは、ヨーロッパのチームの方が日本の選手に比べて全然厳しいと思います。環境が厳しいから。今、体罰が問題になってるじゃないですか。あれは、厳しい指導とか言ってるけど、厳しいっていうのは、アスレティック・ビルバオのカンテラとかバルサのカンテラとかみたいに、「これできますか? できないの? はいさようなら」。それですよ。

――厳しさの種類が違いますよね。

清水 僕はJクラブのユース育ちのある選手に話を聞いたんですけど、ユース所属時の練習で、当時の指導者から「そんなプレーするなら明日から来なくていい! クビだ!」と言われたらしいんですよ。でも、その選手はその時点で全くピンときてなくて。

「クビって言われてもユースに入ってるし。俺、今プロじゃないし」と、正直その時はそう思ったとか。その後プロになってから、その言葉の真意がわかったらしいです。今の日本ではなかなかそこまで意識しづらい。だけど、スペインではプロの厳しさを味わう環境に、ユースの時点ですでに放り込まれているっていうことですよね。

――すごく若い時からそういう環境になっていると。

西部 13歳くらいから競争になる。一応何年間かは確保するんだけど、結局毎年新しい選手が入ってきちゃう。定員も決まってる。

――落ちこぼれちゃったらそこではもうできないから、次に移るか、サッカーをやめるかしかない。

西部 そういうことですよね。

清水 高地の厳しい環境で水をあまりやらずに育てた野菜って、すごく甘みが強くなるとか、味が濃くなるとか言うじゃないですか。選手もそういう環境でやっている。

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