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日本代表 11年前

【西部謙司が徹底分析】手痛い敗戦を喫したヨルダン戦。如実に現れた1対1の弱さ。

text by 編集部

1対1で対峙する相手を止められない

編集部 決めるところを決めないと、という典型的な試合になってしまいました。

西部 それが表現的には全てだと思います。何故勝てなかったのかといえば、決定機を決められなかったからということになります。ただそれはどの試合、どのチームでも一緒ですし、サッカーにはこういう試合もあるということです。問題はW杯までにどれだけチームを伸ばせるかというところで、このままじゃ勝てない、というのを認識させられた試合だと言えるでしょう。自分たちの設定している目標、レベルよりも低い試合をしてしまったとは思います。

編集部 目指しているレベルには達していなかったと。

西部 弱点は全部出ましたね。セットプレーが弱いということ、吉田の足が遅いということ、あとはピッチが悪いと思うようにプレーできないこと。あまり勝敗に直接現れることが少なかっただけで、今までも同じ弱点は抱えていましたが。ほんのちょっとのズレが、こうした敗戦に繋がることは良くあることです。

編集部 前半終了間際にセットプレーから失点しました。

西部 あそこは岡崎がニアで競り負けているんですが、そもそもなんであのポジションで岡崎が競っているんだ、という問題もありますし、セットプレーのディフェンスは日本が継続して抱えている弱点です。相当考えていかないと、今後も同じような形で失点する可能性は減っていかないと思いますね。W杯の本大会に行けばヨルダンよりも大きな選手がいるチームはたくさんありますし、次に当たるオーストラリアもかなり高さがありますから。

編集部 アウェイですし、先に点を許したのもメンタル的には厳しかったかもしれません

西部 前半の終わりに取られたのは大きいと思うし、2点目が痛かったですね。1対1でスペースを持たれると、相手の9番と10番にかなりやられていました。スピードがあり、ドリブルも上手かった。1対1の局面で、日本はほとんど彼らを止められていません。前半も内田が10番に振り切られてシュートを打たれているシーンがあったし、9番にもかなりやられている。日本代表がネイマールやカカを止められないのは当たり前なんですよ。あれはネイマールやカカだから止められなかったのではなく、ヨルダンの選手でも止められないのが現実です。

編集部 個の能力の問題ですね?

西部 ディフェンスの1対1に関してはそうです。吉田にしても内田にしても、1対1で対峙する相手を止められないということです。ディフェンス時に1対1の局面で強さを発揮できるのは長友と岡崎ですね。この二人以外、個の力で相手を止めることは難しいので、結局組織で守らないと難しいし、それが現れた試合だと思います。

【了】

プロフィール

西部謙司
1962年9月27日生まれ、東京都出身。学研『ストライカー』の編集記者を経て、02年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。現在は千葉市に住み、ジェフ千葉のファンを自認し、WEBスポーツナビゲションでは「犬の生活」を連載中。週刊サッカーマガジン、フットボリスタなどにコラムを執筆中。『ちょいテク 超一流プレーヤーから学ぶちょっとスペシャルなワザ』監修(カンゼン)、近著に『戦術リストランテⅡ』(ソル・メディア)、共著の『サッカー日本代表の戦術が誰でも簡単に分かるようになる本』(マイナビ)、『FCバルセロナ』(ちくま新書)がある。

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