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『決定力不足』という言い訳にサヨナラを ~決定力を個人技頼みにしないための戦術的アプローチ~(前編)

text by 清水英斗 photo by Kazuhito Yamada

[決定力不足の要因2]シュート練習の数が足りない

 そもそもシュートを試みるチャレンジの数に違いもある。今年2月に行われたブラジルワールドカップアジア3次予選のウズベキスタン戦の試合後、0-1で敗れた日本代表のザッケローニ監督は記者会見で次のようなコメントを発した。

「乾が2回ぐらい前を向いてゴールを目指し、香川にもチャンスがあった。思い切ってシュートを打っても良かった。ミドルの質自体はわれわれも持っているが、そこに至る意識や意図が足りない」

 ザッケローニ監督が指摘するように、相対的に日本人選手はゴール前でパスを選ぶ傾向が強い。また、仮にシュートを選んだとしても、例えばアンリのインカーブシュートやメッシのタイミングをずらしたシュートのような独自のスタイルを持っているわけではなく、何となくインステップでボールを引っ叩いて外す場面が目立つ。パスやドリブルに比べると、シュートに対するこだわりが薄いイメージだ。

 国民性によるプレースタイルの違いは、その国の少年にサッカーボールを与えたとき、彼らがどんな遊びをするかでだいたいの傾向がわかる。ドイツの町中で筆者が多く見かけたのはシュートゲームだった。5人くらいが列になり、転がしたボールを順番にシュート。外した人はGKになる。それを延々と繰り返している。

 また、オランダの場合は、お互いの足元に強烈なボールを蹴り込み、トラップでコントロールできなかったら負け、という遊びを楽しむらしい。日本では4対2のように、ゴールを使わない(ボールを運ぶ方向性のない)状況でパス回しを楽しむこと、あるいはリフティングなどが多いだろうか。

 筆者は若い日本人選手がドイツクラブへ短期留学し、練習参加する様子を取材したことがあるが、コーンの間をドリブルさせたりすると日本人選手は抜群にうまい。ところがシュート練習になるとゴールの隅にズバンと決めるドイツ人選手に対して、日本人選手のシュートはなかなか決まらない。

 このような明らかな違いは、子どもの頃から慣れ親しんだプレー習慣と無関係とは言えないだろう。大人になった段階で、それまでに打ってきたシュートの絶対量に違いがあるのだ。選手の育成はこのような背景を踏まえて行う必要があるのではないだろうか。

【後編に続く】

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