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イブラヒモビッチへのPSGの負担は年額39億円から77億円に!? 高額課税がもたらすリーグ1の弱体化

text by 小川由紀子 photo by Kazuhito Yamada

リーグの弱体化は必然か

 これだけ負担して、ファイナンシャルプレーに問題はないのかと、PSGのアル・ケライフィ会長を直撃したところ、「まったく問題ない。規定に外れることは何もしていないので、我々には関係ない」という余裕の返答だった。

 ファイナンシャルプレーは主に、赤字の額を制限するためのものだが、アル・ケライフィ会長率いるQSIがPSGの実権を握って以来、収入は105%アップ、チケット売り上げは144%増、グッズ売上は95%、スポンサー収入が51%、マッチデーのVIPシートの売上は122%で今季はすでに早い段階でソールドアウトと、収入面で確実な増益を記録している。

 支出も多いが、支払った分だけのリターンがあるという勝算があるのだろう。しかしその会長も、今回の75%法については、「フランスのサッカー振興にとって良い案だとは言い難い。このような状況になれば、世界のサッカーシーンから置いてけぼりになる。」と悲観的だ。

ロナウド
C・ロナウドの獲得も噂される【写真:山田一仁】

 今冬入団したベッカムは、契約期間が5カ月間ということで所得税の対象にならないことに加えて、全額をチャリティに寄付すると発表したが、これはクラブにとっては節税にも多いに役立っていることになる。がしかし、今は採算がとれていても、スタジアムの増築にはまだ数年かかるため、現在の約45000人のキャパシティではチケットセールスの売上には上限がある。

 この夏のメルカートでも、クリスティアーノ・ロナウドやら、ネイマールやら、ビッグネームの名前ばかりが噂されているが、税率が75%に引き上げになれば、収支をとるのはそう楽ではない。

 プロリーグ協会のフレデリック・ティリエズ会長が言うように、「フランスリーグは欧州でも弱体化の一途をたどり、国家も高額納税者を失い、両者にとって“ルーズ・ルーズ”(ウィン・ウィンの真逆)」だ。

 現代では、サッカーがもたらす経済効果はもはや無視できない。自国にチャンピオンズリーグやW杯で準決勝、決勝といったファイナルステージへ進出するチームを抱えることの意義は大きい。サッカーでの隆盛は、どの産業よりも手っ取り早く世界中に存在感をアピールできる手法でもある。

 低所得で生活に困窮する人々が、「金持ちからお金をとれ!」という心情になるのは大いに理解できるが、ここは一歩立ち止まって、転じてどのような結果を生み出すか、と考えて、結論を導く必要があるだろう。

【了】

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