サッカークラブを超えた存在 ~スウェーデンの移民クラブを訪ねて~(前編)

近年、移民を積極的に受け入れてきたスウェーデン。経済成長期に貴重な労働力となったが、犯罪率の増加など問題も起こっている。そうした面を改善すべく活動しているのが、同国のマルメ・ローセンゴード地区にあるサッカークラブ「FCローセンゴード」だ。国内でも特に移民の多いこの地区で、同クラブが担っている役割とは一体何か。現地にあるクラブを訪ね、その取り組みに迫った。

2013年04月22日(Mon)15時41分配信

text by 鈴木肇 photo Hajime Suzuki / Ryota Harada
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【サッカー批評issue55】掲載

スウェーデン代表に移民選手が多いワケ

 読者の方々は、スウェーデンという国に対してどのようなイメージをお持ちだろうか。高度な福祉国家、緑多き美しい自然、ノーベル賞授賞式が開かれる国、家具販売店のイケア、ファッションブランドのH&M。これらはいずれも正しいが、実はスウェーデンは今日、欧州のなかで移民や難民の受け入れにもっとも開放的な国の1つでもある。

 スウェーデン中央統計局によると、スウェーデンの総人口約940万人のうち、およそ19%が外国のバックグラウンドを持つ人で構成されている。彼らの出身国をみるとフィンランドが最も多く、以下旧ユーゴスラビア諸国、イラク、ポーランドと続く。近年ではソマリアからの移民・難民が増加している。

 歴史をさかのぼれば、中世のハンザ同盟下のドイツ人がスウェーデンに移住したことなど、様々な局面においてスウェーデンは外国人を受け入れてきたが、今日のように大量の移民や難民を受け入れるようになったのは第二次大戦後だ。

 大戦中、中立を守り続けたスウェーデンは、戦火に巻き込まれた他の欧州諸国と比べると復興が早かった。そして1960年代に経済の成長期を迎え、「福祉国家スウェーデン」としての基礎を築き上げることに成功する。企業は労働力を求めるが国内の人口では間に合わず、そのため国外から労働者を確保することに奔走する。

 こうした労働力確保のため、隣国フィンランドやイタリアといった国々からの労働者を広く受け入れた。1990年代に入ると労働力が余剰化するが、その一方で中東やアフリカ、旧ユーゴスラビア諸国などから民族紛争や貧困を理由とした難民を多く迎え入れている。

 一昨年の総選挙で「反移民・反イスラム」を掲げる極右派の民主党が躍進し初の政党進出を果たしたことから、近年は移民や難民の受け入れに対して否定的な国民も少なくないが、スウェーデンは依然として移民・難民の受け入れにオープンな国と言えるだろう。

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