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ベッカム引退劇に潜む“金銭問題”――。それでも称えるべきサッカー選手としての素顔

text by 小川由紀子 photo by Ryota Harada

75%というフランスの税制問題

「やめるときが来ると、自然に「今だ」とわかるもの。それが今だった」

と語った言葉は、おそらく自然な感想だろう。だが、そこに至ったのには、いくつかの要素が考えられる。

 1つは、フランス国に収める税金だ。

 フランスでは、180日以上滞在した場合に、所得税の納税義務が生じる。1月31日にサインしたベッカムは、今季はその対象にはなっていないが、もう1年在籍することになれば、いくらホテル住まいであっても毎日の練習に参加することで、滞在日数は実質180日を越えてしまう。

 今季、PSGからはサラリーは1銭たりとも受け取っていない。全額チャリティ団体に寄付、というのは事実だ。しかし、彼にとって、サッカークラブから受け取る給料は、収入の2割にすぎず、広告やプロモーション関連で残りの大半を稼いでいる。

 仮に来季も全サラリーを寄付したとしても、それ以外の収入がある限り、フランスの悪名高き『ラグジュアリー・タックス』こと、75%の課税は免れない。すでに億万長者である彼にとって、1年分の収入の大半を税金にもっていかれたところで死活問題になることはないが、それが得策か否か、という考察材料には十分なりうるだろう。

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