敵は相手ではなく自分たちにあり
今回のメキシコ戦のように明確な目標がない状態での試合となるとき、気をつけたいのは極端にプレーの質と量が落ちてしまうこと。具体的に言えば攻守の切り替え、特にネガティブトラジションといわれる攻撃→守備になったときに顕著に見られる。守備でアクションを起こすのが遅れたり、やるべきことをサボったりしてカウンターを食らってしまうのはザックジャパンの課題の一つといっていい。
メキシコはボール回しのうまさばかりが強調されるが、裏への飛び出しに優れたチチャリート、スピードに乗ったドリブルを得意とするドス・サントスがいてカウンターのスピードも速い。彼らに前を向いた良い状態でボールを渡してしまえば失点を覚悟しなければいけない。
イタリアを相手に攻撃的なサッカーで点の取り合いを演じた日本と異なり、メキシコはイタリア戦、ブラジル戦のどちらも完敗に終わっている。それだけに最後の試合で日本に勝ってプライドを保ちたいという気持ちは強いだろう。日本よりも最終戦に臨むモチベーションは上かもしれない。
0-3で敗れたブラジル戦は長友佑都が「1試合をムダにしてしまった」と語ったように、90分間でチャレンジできなかったという悔いが残るものだった。ブラジル戦のような試合を繰り返さないようにという気持ちで入ったことが、イタリア戦のパフォーマンスにつながった。
メキシコ戦は確かに明確な目標は見つけづらい。ただ、ワールドカップまでの間に残された貴重な海外での国際試合であることも間違いない。このような状況で最高のプレーを見せることがワールドカップにつながっていく。
敵は相手ではなく自分たちにあり――。メキシコ戦は相手どうこうよりも、自分たちとの勝負に打ち勝つことが大事になる。
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