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【ロングインタビュー】カルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(後編)

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

監督に課せられた重要な仕事

――ところでミスター、これが最後の質問ですが、監督アンチェロッティといえば“選手との太い信頼関係”。どんなチームでも選手たちと極めて良好な関係を築くことのできる理由とは一体どこにあるのでしょうか? これまでに数多くの選手を指揮してきたわけですが、ただの1人として監督を悪く言う者はいないと言われています。

ルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(後編)
カルロ・アンチェロッティ【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

「えっ?! ナニ? この私を悪く言う者が1人としていないだって!? ノー、ノー……そんなことはないって、絶対に。むしろ、一体どれだけの選手が色々と、というかこの私のことをボロクソに言っているか……(笑)。なんなら何人かの名前を挙げてもいいんだよ。それこそ、例えばミラン時代に不遇をかこったアルベルト(・ジラルディーノ)が、彼ではなくインザーギを私が使い続ける中で果たして何を思っていたか……とか、同じくミランで使われなかったグルキュフとか……。とまぁ、それはあくまでも冗談なんだが……(笑)、もしも君が言ってくれるのが本当だとすれば、それは私がこれまで、そして今も変わらずに、自らが現役だった頃を忘れていないからではないだろうか……と思うんだよ。つまり、私には選手たちがその時々で何を考えているのか、何を監督に求めているのか、それを言葉にする前に彼らの胸の内が分かるんだよ。

 大切なのは、プロである選手たちの自主性を最大限に重んじることだと思う。したがって私は強制を強く否定するし、彼らに掛かるストレスを可能な限り取り除くことが監督に課せられた重要な仕事の一つだと考えているんだよ。私は選手たちを心から信頼し、だからこそ彼らもまた私を厚く信頼してくれる。確かに、一部で言われるように、この私が仮にもっと厳格な監督であれば、より多くのタイトルを手にできていたのかもしれない。でも私はこれまでの自分が残してきた足跡に満足しているんだよ。少しでも多くの選手が“あの監督と出会えて良かった”と言ってくれるとすれば、それはどんなに重要なタイトルをも遥か超える価値を持っているはずだからね。そう信じて、これから新しく始まる戦いに臨んでいきたいと思う」

【了】

初出:欧州サッカー批評5

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