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Jリーグ 11年前

北嶋秀朗 サポーターと真剣に向き合う男

text by 土屋雅史 photo by Masashi Tsuchiya

サポーターと一緒に試合後にロッソダンス

――ロアッソサポーターの第一印象はどうでしたか?

北嶋 ロアッソサポーターも含めた熊本県民に対して感じたのは、温かさですね。一番最初にサイン会をやった時に「ようこそ熊本へ」とか「熊本に来てくれてありがとう」という言葉を、まるで挨拶かのようにみんなから言われたんです。千葉で生まれ育って、そのまま地元のチームに入団したので、これまで「柏に来てくれてありがとう」と迎え入れられるという感覚はありませんでした。だから凄いビックリしたんですよね。それは人を受け入れる時の、熊本県民ならではの温かい表現なんだろうなと感じました。

――勝利した試合の後に選手とサポーターが一緒になって踊る“カモンロッソ”は北嶋選手の発案だとお聞きしました。

北嶋 そうですね。それは単純にレイソル時代は勝ったら“レッツゴー柏”をやって帰っていたので、サポーターに挨拶してそのまま帰ってくるのに凄く違和感を覚えたんです。あれは勝った時の特別なものなので、だから勝ちたいと思うようになって、サポーターもそれが凄く嬉しくなる。あれをやるためにみんなが一緒に頑張ろうという雰囲気になるという意味では、勝つことを習慣化させるためにもいいことだと思っています。それで南(雄太)や(藤本)主税さんに提案したら、「やった方がいいね」ということになって始めました。

――それを始めてから選手とサポーターの関係に変化が出てきた実感はありますか?

北嶋 その時間をサポーターが楽しみにしてくれているというのは十分理解していますし、一緒に勝利を共有したいという想いが出てきているのは実感しているので、そういう意味では“一緒”という部分が強くなった気はしています。1つのイベントとして一緒にできることというのを感じてくれているのかなと。

――僕は北嶋選手のロアッソデビューとなった味スタのヴェルディ戦で、黄色いユニフォームを着ているレイソルサポーターを受け入れたロアッソサポーターの姿勢に感銘を受けました。

北嶋 あれはロアッソサポーターを誇らしく思えた瞬間で、「おお、ロアッソ熊本ちっちゃくねえなあ」と感じましたね。レイソルサポーターも色々な想いを持ってあの場に来てくれていて、あの場所で黄色いユニフォームを着ることの意味も絶対に理解しているはずなんですよね。でも、そういう想いも全部汲んだ上で一緒に応援してくれていたのを見て、「スゲーじゃん、ロアッソ」って思いました。ロアッソサポーターがレイソルサポーターや、あの時はアルディージャサポーターもいたんですけど、様々な色のサポーターと一緒に応援しているのを見て、大きく括ると「サッカーっていいな」と感じましたし、ロアッソサポーターにも、味スタまで来てくれたレイソルサポーターにも「ありがとう」と思いました。凄く嬉しくて素敵な光景でしたね。

――今後、ロアッソサポーターに求めていきたいことはありますか?

北嶋 基本的に常に応援していこうというスタンスを持ってくれているサポーターだと思うので、その想いをずっと持っていて欲しいですし、目線を常に僕たちと一緒の位置に置いていて欲しいです。選手とサポーターというのは、どちらかが上でも下でも絶対にダメだと思うんですよ。選手の方が偉いというのは絶対にないし、サポーターの方が偉いというのも絶対になくて、僕は一緒の目線だからいいのだと思うんですけど、もしどちらかが上だとか下だとか、どちらかが偉いとか偉くないとかがあるのであれば、それは絶対に違うなと思っています。だから、ブーイングする時は本当に僕たちに何かを気付かせるようなブーイングをして欲しいし、僕も考えるから一緒に戦うってことを常に考えていて欲しいなと思いますね。

――最後の質問です。北嶋選手にとって、サポーターとは何ですか?

北嶋 サポーターとは仲間。戦友。チームメイトと一緒です。12番目の選手ですから。でも、僕は“チームメイト”という言葉を軽い意味で使っていないですよ。本当に“チームメイト”だと思っていますから。お互い一緒に高め合っていきたいですし、それは僕がライバルに対して思うことと一緒で、「コイツを俺より凄くさせて、俺もコイツより凄くありたい」というようなポジティブに競い合う関係を、サポーターとも築いていきたいですね。

【了】

初出:サッカー批評61

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