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暑さはサッカーの敵なのか? 「夏場はいいサッカーができない」を科学する

text by 北健一郎 photo by editorial staff

わずか2%の脱水でパフォーマンスは低下する

 では、なぜ暑さによってパフォーマンスは落ちてしまうのだろうか。安松氏によれば、2つの大きな要因があるという。

「1つは、体温がある臨界地点まで達してしまうこと。暑い中でプレーすると体温が上がりやすいため、体力の消耗が激しく、大脳の働きが低下します。選手によっては熱中症にかかる危険性もあります。もう1つが体重の減少です。わずかな脱水症状でも運動能力やスキルの発揮には大きな影響があります。運動能力は2%の脱水から妨げられ、5%以上減少した場合、パフォーマンスは7割ぐらいまで低下します」

暑さはサッカーの敵なのか
空いた時間を使ってうまく水分補給することが大事【写真:編集部】

 サッカー選手が1試合プレーすれば平均して3キロぐらい体重が落ちると言われる。体温が上がることによって、熱を逃がすために汗が出て、それによって体から水分が失われ、体重が減る。暑さは体重の減少、つまり運動能力の低下に直結するのだ。

 Jリーグではスタートダッシュに成功したチームが夏場に急失速するケースが珍しくない。特に前線からアグレッシブにプレスをかける、いわゆる「走るサッカー」を展開するチームは、この状況に陥りやすい。

「体重を落とさないためには、水分補給をすること、体温をあまり上げないことが必要です。極端に言えば、試合前にアップをやらなければ体温の上昇は抑えられますが、呼吸循環機能を上げなければいけない。夏場の試合ではアップの時間をできるだけ短くする、直射日光に当たらないように日の当たらないところでやるなどの工夫をしているチームも多いです。

 また、夏場にパフォーマンスが落ちやすい選手は、体内の塩分がなくなるのが早いので、塩分が多めのスポーツドリンクを飲ませることもあります。ただ、今のサッカーはFWの選手もディフェンスに参加しますし、リスタートも素早く行うので、プレーが止まる時間が短い。ですからプレー中に水を飲むのは難しいので、選手が傷んだりしているときなど、空いた時間を使ってうまく水分補給することが大事です。

 試合のテンポを上げたり、プレーの時間を増やすことは、観客にとってはうれしいかもしれませんが、選手たちにとっては大変だと思います」

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