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ジャパンツアーからアーセナルが変わる!? ヴェンゲル・コード(信条)を読み解く

text by 東本貢司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

チーム作りにおけるヴェンゲルの「信条(コード)」

 たとえ、彼らが今はもうハイベリー、エミレイツを飛び出してガナーズファンの失意の象徴に変わり果てていようとも、その事実は変わらない。言い換えれば、ヴェンゲルが“創った”というお墨付きがあってこそ、彼らはフットボール史に名を残すスターになり得たのであり、そのことは彼ら自身が堂々と認めている。

 アンリは「今でも自分のハートにはアーセナルのエンブレムが染め抜かれている」と公言し、ファブレガスは事ある毎にツイッターに「アーセナル思い」のメッセージをつぶやくのだ。

 もしも、ヴェンゲルがスアレスやイグアイン、あるいはルーニーまで新補強リストに入れているとすれば、それは明らかな“変節”を意味する。「すでにスターとしての地位を確固たるものにしているプレーヤーに、(アーセナルのスタンダードからすれば)法外な資金を投じること」は、ヴェンゲルのチーム作りの鉄則に敢然と背くことになるからだ。

 これまでヴェンゲル・アーセナルが果たした最高額補強は、公式には2000年のシルヴァン・ヴィルトール(1200万ポンド)ということになっている。

 一説にはホセ・アントニオ・レジェスやアンドレイ・アルシャーヴィンの移籍金はそれを上回っていたともいうが(以上3名の移籍金額はいずれも公にされていない)、彼らはいずれも「プレミアにおける新人」だった。すなわち、実質的にはアネルカらと何ら変わりがなく、それでいて“あらかじめ大きな期待を背負っていた”ことが、かえって足かせとなっていたきらいがある。結果はどうだったか。彼らが“名前通り”の貢献度を果たしたと言えるだろうか。

 たぶん、ヴェンゲルの「信条(コード)」のカギもそこにある。彼は“名もなき才能”の開花、噴出こそ尊いと考え、それに信頼を置くことこそ自らの(監督としての)証明だと考えているのだ。しかし――。

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