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バルサU-12圧勝にはワケがある。リバプール・コーチが指摘する日本の育成現場に欠けていること

text by 永田到 photo by junior soccer editorial staff

子供の人間性を尊重し、選手としての自発性を促していくスタンス

 教育や試合観戦の環境整備については別の機会に論を待つことにして、宇治氏が指摘したプレーの選択肢を『多く発見する』『最適なものを判断する』『素早く実行する』ためのスキルを引き延ばせるようにするためにはどうしていくべきなのか。

 宇治氏によると、イングランドのコーチは「子供の人間性を尊重する」というスタンスを重視して育成に取り組んでいるという。

「コーチが子供を高圧的な目で見るのではなく、コーチと選手という人間同士の関わりとしてのコミュニケーションを重要視しています。もちろんイングランドでも、高圧的なコーチも中には存在します。でもそういった人は近年ほとんど見られない。少なくともエリート選手育成の領域においては。

 イングランドのクラブにおける育成を見ている限りでは、命令に近いかたちで子供に言うことを聞かせるということはまずありません。そもそもイングランドでは、コーチが命令したところで子供は言うことを聞かない。彼らが納得のいくように、コーチが理由も含めて説明していきます」

 それでは例えば、フォワードの選手が味方にパスを出すべき場面でシュートを打ったとしたら、どう声をかけるのか。

「まずコーチがフォワードの選手に言うべきなのは、その味方の選手が見えていたかどうかの確認。『ゴールを決める』という目標に対して、複数の選択肢を持って判断できていたかどうかということ。

 ただ単に自己中心的に『俺がシュートを打ちたい』というのではなく、周囲を意識して、味方がそこにいるということが見えていたかどうかということ。もしそれが見えていなかったのであれば、ボールばかり見るのではなくて、顔を上げて味方を見えるようにしようね、というアドバイスを送ります。

 そしてもし見方が見えていたということであれば、『自分がシュートした場合と(自分がパスを出して)味方がシュートした場合で、どちらの方がゴールする可能性が高いと思うか』ということを確認する」

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